誰にも負けない
小学三年生の頃まで、日田の街から県を跨いだ場所に位置する
Aチームの一員として始まったその年は、高広にとって混沌とした一年だった。昇格後は一回りも大きい上級生達から「あいつはコーチのおかげでこっち来れたんだろ」と囁かれ始めた。彼らは高広をいじめようと目論むも、高広の父親がコーチを務めるが故に容易く手を出すことは出来なかった。冷静沈着で、日々の厳しい練習を一人淡々とこなす高広をチームメイトは敵対視していた。彼自身も周りの上級生達からの風当たりが強いことを感じていたが、自らを野球に没頭させることで気持ちを紛らわせていた。
「チームを引っ張るのは俺なんだ」
特に高広を敵対視していたのが新城バファローズAチームの4番でキャプテン、
時は過ぎ、バファローズは市内で行われる夏季大会に参加していた。トーナメント形式で行われる全五試合で見事圧勝、高広と城井と投打の柱による活躍によりチームは優勝した。上位の成績を収めたチームに表彰が行われ、最後にMVPの発表があった。城井は確信していた。四番として溜まったランナーを返し打線を牽引した彼こそがMVPにふさわしいのだと。しかし、受け容れ難い現実は城井に重くのしかかろうとしていた。
「第二十二回新城市夏季大会、MVPは............
新城バファローズ、足立高広君です!」
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