恋の球ピッド
安東 隆太
熱く滾る想い
「いつかお前を超えてみせる」そう言い放った遼人の目は潤んでいた。
「お前を本格的に外野手へとコンバートする。」
全体練習では外野守備をこなしながら投手に未練のあった遼人は、エースの座を奪還する為に毎日投げ込みも行なっていた。全ては高広を越える為に.....
そんな彼にとって、監督の一言は彼の胸を激しく貫いた。
「なんでですか!俺だってマウンドで投げたいんです!」
遼人は必死の形相で監督に訴えた。
「球の速さなら負けてないが、高広のコントロールは一級品だ。総合的に見ても実力の差は比べるまでもない。ただお前の打撃センスと脚力には光るものがある。素質を十分に活かす為にも、これからは外野手一本に絞ってくれないか。これ以上投げ込むと大事な肩を痛めるぞ。」
監督の口から出た言葉は遼人にとってこれ以上ないくらいに冷酷だった。しかし遼人もそれに納得せざるを得なかった。高広の投球術は他チームのエースと比べても群を抜いていたし、チームメイトも自分自身も彼がエースとして君臨することに何の異論も無かった。遼人は考えた末に投手を諦め、日田ボーイズには外野手として骨を埋めることになった。帰り際、前を歩いていた高広に遼人はこう叫んだ。
「いつかお前を超えてみせる」
少年の闘志は密かに燃えていた。
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