第15話 長編アニメーション映画『すずめの戸締り』 現実を突きつける回答、それでも物語の力も隠す回答
最近の人気アニメーション映画タイトルの初週大量上映が新海監督作品でも適用され、加えて入場プレゼントまで設定されて動員はどうかなと思いながら予約をしたら満員でした。作品は色々時になる点はあるが確かに一定の水準を超えているし、テーマ性の強さとエンタメとしての成立はこの監督の力量でもある。
この作品、ジブリ的なファンタジー層と大災害で大事な人を喪失した生存者(さヴァイバー)がどのようにしてその傷を受容するのかというテーマが重なって出来ている。前者に関しては正直適当な感じが強い。それは禍の扉を閉じる家業(というか趣味?)の草太にしても同様でこの辺りは『君の名は。』ほど設定を施す気がなかったようにも見える大雑把な感じがある。
その代わりのテーマが突きつけてくるものは重い。どこの時空とも溶け合っているという常世の世界で彼女がそうあって欲しいと思っていた出会いが思っていたものとは違っていたというのは予感はしても実際そうなると人が想像力の上で他者に救ってもらうという構図が否定されてくるその現実的な解の強さがきつい。そこは彼女が願うであろう出会いで良かったのではないのかと思う。
ただ、その一方で乗り越えた先の未来やそれでも主人公があの日からこの日まで常に手元に置いてきたものが誰を象徴してきたのかと考えると現実の強烈な強度の下にまだフィクションの救いはあるのだなと思うのです。わかりやすくわかりにくい作品。『君の名は。』以降の三作で複数の答えが隠された作品という複雑さ。過去作に比べて観客の受け止める力を信じているように感じた。
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