第12話 長編アニメーション映画『犬王』ミュージカル映画なのか音楽映画なのか、いや湯浅監督映画だ!
室町幕府、南北朝の時代。統一を画策していた三代征夷大将軍義満の治世に忽然と姿を表した猿楽師犬王。彼が舞ったという猿楽は音楽がどのようなものかは現代に伝えられていない。そんな彼と関わりを持った琵琶法師が名もなき人々が様々な思いを残して語り継がれようとしていた平家物語に関わり、そして時の権力者義満の前での披露となるが。
原作は『平家物語』現代語訳を手がけた小説家古川日出男さんの『平家物語 犬王の巻』。湯浅政明監督、音楽大友良英、脚本野木亜紀子、キャラクター原案松本大洋、アニメーション制作サイエンスSARUという布陣。
湯浅監督が変わり者すぎて破綻した部分が生じた企画でもある。
企画自体は早かったようで脚本は2018年に上がっていて2021年夏には海外の映画祭で公開、2022年5月日本国内上映が始まった。
アスミックエースが製作委員会と配給で関係しており竹内文恵プロデューサーの名前がよく言及される。この方中々欲張りな企画者でもあるようで同じ古川日出男さんが手がけた現代語訳『平家物語』をテレビアニメ化する企画も立ち上げこちらは2020年に脚本開発など始まり2021年9月FOD先行独占配信、2022年1〜3月に地上波放映と見放題サブスク配信での放映話公開が始まっている。新型コロナ感染症流行がなければ『犬王』が先に公開されてその後で『平家物語』放映という並びのはずが思わぬ世界的な出来事の影響で順番が入れ替わっている。
『犬王』『平家物語』は同じ原作者、同じプロデューサーが企画に関わり同じアニメーションスタジオが制作を担当しているものの監督、脚本、音楽、キャラクター原案は全く異なる座組みで実現された。双子といってもいいこの2作品は音楽でまるで異なる演出判断がなされた。
『犬王』はミュージカル映画の発想なのか劇中演奏音楽である事をどこが捨てている部分があって劇中音楽に存在しない楽器、つまりエレキギターが鳴っていたりする。
『平家物語』は音楽映画として劇中演奏音楽としての主人公による歌唱と琵琶演奏や重衡・清経・敦盛トリオの横笛演奏が行われていてその上で横笛トリオの演奏が劇伴音楽のモチーフとして取り込まれている。
『犬王』の評価の分岐点は音楽映画としてあろうとしているように見えるのにスクリーンには存在しないエレキギターなど現代楽器が鳴っている部分にある。出て来ない楽器、あの時代には存在しない楽器が描かれていて音を響かせているというのはトゲという人もいれば、問題なしという人もいる。
この問題、音楽担当された大友さん的なキャラクターにエレキギターとアンプを持たせて室町時代にタイムスリップさせて仕舞えば解決は出来ただろう(ただその場合でも未来の人が過去に知っている事を元に再現しただけではないのか?という批判は避けきれないが)。
そしてフェスの最中、木漏れ日の中で起きた怪異が元に戻る時に現代に戻って喪失感の中で生きて、生きて、そして死ぬ間際、600年後の二人と再会して今一度エレキギターの弦に指をかけて最期の絶息ではなく絶音を響かせて亡くなるとかそんな物語を見たかった。
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