第7話 Netflixアニメ「地球外少年少女」AIは未来予想の夢を見るかも?

あらすじ 2045年、AIに絡んだ事件の影響で宇宙進出熱が冷め始めた地球。UN2による人類秩序の中で未成年者受け入れ可能な宇宙ステーション・

少年少女を招待した滞在イベントが行われようとしていた。







警告:作品世界の内容に触れる部分があります。




 現実的に可能性のある宇宙旅行のある世界を構築して見せようというコミックや小説などの原作を有さないオリジナル作品。仮想空間とジュブナイルが融合したアニメ「電脳コイル」をオリジナルで作り上げた磯監督が手がけており、今回はAIを軸にして世界を構築されている。


 冒頭、軽い棘に近い嫌な登場人物が何人か出てくるのですが、基本理由は存在していて、その事が本作世界を知っていく謎に対する答えとつながっている。主人公らの生まれた年前後から2045年までの世界を知っていく事が本作の推進力だと言える。

 なので本作のプロット絡みの話は避けてAI関係の描写について考えてみたい。


 AIとは何か。結果の演算が可能な選択肢を可能な限り割り出して行く事と、その演算可能性をパターン認識を用いて「傾向」を学習させて評価する事を組み合わせて最良の選択を割り出すものではないかと思っている(あくまでも筆者の個人的な認識です)。

 本作の場合は、無限に等しい演算能力を何らかの方法で実現していて(量子コンピュータ?)、それによって膨大な選択肢を分析して未来予知に手をつけてしまったAIがどう振る舞い出したかという事を描いている。

 劇中で「ルナティック」(他のSF作品だとシンギュラリティー、技術的特異点と呼ばれるAIが人類の知能を超える転換点を指す)が重大な用語として扱われている。最初の「ルナティック」に対して主人公は人工知能崩壊=誤った答えを見つけたのだとしていた。AIは価値観を持たない。入力されたデータに対する反応を学習、つまり統計データとして蓄積して答えを出力する。誤ったデータが入力されて誤った学習をすれば誤った結果しか出ない。本作ではそういうAIが犯す可能性がある存在である事も作品世界に取り込んでいる。

 劇中で登場するあるポエムと呼ばれるものも面白い。当初「ノストラダムスの大予言」的などうとでも取れる曖昧な文章かと思ったのですが、あるスマート・アプリの描写を見るとそうでないらしい設定があるらしい事が分かる。これはポエムではなくAIが未来予測した際に演算したデータのログそのものを言っているのではないかなというのが筆者の予想。未来に何が起きるのか重大なイベントについて選択肢とその結果評価データがあって、それに対して現実に起きているイベントを入れて行ってどの選択肢に流れて行っているか表示しているのかなとは観ていて思った所。そうなるとポエムがどの程度の容量のものなのか想像がつかない。この辺りは上手く説明を避けている。そういうのがフィクション作りには大事。


 シャトル打ち上げの第一段ロケットも自律着陸の再利用型みたいですし、細かいところで色々と仕込まれている本作、映画館で見るか(少ないのが残念)、Netflixで観るかはともかくとして面白いので画面やスクリーンの隅々に目を光らせて観られると良いですね。一見の価値はあります。


追記:劇場公開の後編(「はじまりの物語」)を観ました。内容自体は同一で第4話〜第6話を上映するもの。大スクリーン・大音量で見られるのが魅力。大スクリーンの効果としては背景で細かく描きこまれたディスプレイやポスター類の内容も世界観設定があって、それを反映されたものだとよく分かる。あとは音の迫力もありますが細かい環境音・効果音まで聞こえてくるのは配信をパソコンなどで観ていると気づき難い点だった。

 特典配布は複製原画。少年二人が駆けているところ「時間がないので原画として使ってもらってもいい」というようなコメントが入っていたのが生々しかったですね。アニメ作りは大変だなと思ったところでした。

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