第8話 アーサー視点
「姫さん・・・いるかっ!? おっ」
店の名前を聞いていなかった俺は野生の勘と姫さんの匂いを覚えているこの嗅覚でようやく姫さんのいる店にたどり着いた。
(まっ、いくつか間違えたけれど結果オーライだ)
王都だけあって、飲食ができるような場所も俺たちの領地とは比較ならないくらいある。王子様が女を連れて行く店と言うヒントはあったが、まさか他の人がいないこんなに落ち着いた店だとは思わなかった。俺は二人の席に歩いて行き、当然のごとく姫さんの隣に座る。ここが騎士としての定位置、レオナルド王子がもの言いたげな目でみるけれど、俺はシカトする。すると、ミシェルが耳元で、
「ちょっと、アーサー・・・」
姫さんに少し色気を感じてしまったが、気取られないように澄ました顔で姫さんを見ると、
「こういう時は騎士は後ろで立って待機するのよ」
小声で話をしてきたので、俺も小声で、
「・・・なんでだよ?」
と尋ねる。すると、姫さんは少し考えて、
「ないとは思うけど、誰かが襲ってきた時にご飯を食べてたら、お腹が痛くて動けなくなるでしょ」
「んなもん、俺には関係・・・」
「それとか、料理に毒が入ってたとき、みんな動けなくなっちゃうじゃない?」
「はっはっはっ」
ミシェルの声が聞こえたのか、レオナルド王子が大笑いして、注目を集めようとする。
「やはり、辺境と言うのは、考え方が野蛮だな。二人とも心配しなくていい。ここは王都。最も安全な場所だ」
俺とミシェルは顔を見合わせる。ミシェルの顔も思っていることは一緒のようだ。この能天気な王子様は先ほど刺客と思われる3人組に狙われていたことなんて、全くわからなかったようだ。俺がそんなことを考えていると、姫さんは心配そうな顔してアイコンタクトで、
(大丈夫だった?)
と聞いてきたので、
(もちろん)
と自慢げな顔をしながら、目で返事をした。それでも姫さんは腑に落ちないようで、
(あなたじゃなくて、相手よ? 切り付けてないでしょうね?)
(あぁ、当たり前だ)
さっきの3人組、特にリーダーと思われる男は少しは強かったが、まぁ、修羅場の数の桁が2桁違う・・・と思う。余裕で倒しておいた。
「おい、聞いているのか?」
怪しんだ顔をして俺たちを見てくるレオナルド王子。二人でアイコンタクトをかわして、レオナルド王子のことをすっかり忘れていた姫さんと俺は、やばっ、と少し焦りながら、
「ええ」
「ああ」
と返事をする。
「まぁ、いいだろう。今日はミシェルが妾になるめでたい日だ。おまえも食べるがいい」
「やりぃ」
この男もいいところがあるじゃねぇか。
「ん?」
何かが引っ掛かる。あぁ、魚の骨が喉に引っ掛かるとかではない。この男の言葉だ。
「・・・・・・はぁっ!!!??? 姫さんが、おまえのっ、めかけえええっ!!!!????」
俺は騎士だ。
だから、騎士道に背くことはしない。
けれど、王子と言えど、俺の姫さんに対してあまりにあほくさいことを宣いやがったので、思わず指を差して、お前呼ばわりしてしまった。
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