第7話
レストランについた私とレオナルド王子。
注文はどれがいいかよくわからなかったのと、アーサーのことが心配で上の空だった私の代わりにレオナルド王子がおすすめする物を頼んだ。いざ、メニューが運ばれてくると、あまりのいい香りに、アーサーなら強いから大丈夫だと、私は切り替えた。そして、ゆっくりと、出された料理をフォークで口運んだ。私は温野菜を食べたはずなのに、魚介の旨味が口に広がり、オリーブオイルの香りが鼻を刺激した。
「んっ・・・」
「どうだい?」
ニヤニヤして嬉しそうなレオナルド王子。
憎たらしい顔をしていて、少し悔しいが、
「美味しいです」
「だろっ!?」
静かな店内で、指をパチンと鳴らすレオナルド王子。
他のお客がいないとはいえ、本当に子どもっぽい。
あまりにも大きな声を出すので、割腹の良いおじさんが様子を見に来た。どうやら、この料理を作った人のようだ。
「レオナルド王子、何かありましたか?」
物腰を低くするおじさんは少し怯えている。
「いや、今日もいい味だった」
「そっ、それは良かったです」
安堵の息をもらすおじさん。
私は立ちあがり、膝の上に置いていたナプキンを椅子の上に置いて、「とても美味しかったです」と笑顔で言うと、おじさんは困った顔をして苦笑い。
「食事中に立ち上がるのはマナー違反だぞ」
レオナルド王子に注意されてしまい、私は顔を真っ赤にしながら座った。すると、レオナルド王子は嬉しそうな顔をしながら、手を上げておじさんに戻るように合図を出した。すると、おじさんは一礼して再びキッチンへと少し慌てながら戻っていった。
「ミシェル、いい話があるが聞きたいか?」
そんな赤くなって縮こまっている私にレオナルド王子が得意げに話しかけてきた。
(うーん、結構ですって断れればいいけれど、流石にだめよね?)
「ええ、お願いします。レオナルド王子」
私がそう言うと、「そうか、聞きたいか」と言って腕を組み、「教えようかな~、どうしようかな~」と私をちらちら見ながら、伝えてきてちょっと面倒くさかった。
「もう、焦らさないでくださいませ」
私が伝えると、レオナルド王子は「それもそうだな」と咳払いをして、
「お前を、俺の妾にしようと考えている」
と告げてきた。
「・・・はい?」
私は取り繕っていたけれど、さすがに我慢の限界を超えていたみたいで、不機嫌な声が出てしまった。けれど、レオナルド王子はそんなことにも気づかず、
「いやな、始めはミシェルを正妻に迎えようと思っていたのだが、みんなから反対にあってな。その・・・なんだ、やはり、田舎娘は芋臭いから止めておけと。いや、ミシェルは臭くないぞ、安心しろ?」
私が「芋臭い」に反応して、ギロっと睨むと、レオナルド王子は少し慌てて手を振りながらずれているフォローをした。
「うむ、確かにみんなの言う通りな部分もある。けれど、やはりそなたは美しい」
さらっと言ったその言葉と、レオナルド王子の純粋で真っすぐな銀色の瞳に少しだけドキッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます