第13話
「とりあえず、行ってみますか?」
凹んでいる私にキリエは魔法を学べる場所へ誘ってくれたが・・・・・・
「すいません、ちょっと忙しくなってしまって・・・っ。ふぇんっ」
私は思わずキリエを睨んでしまった。だって、キリエは私専属の従者だと思っていたのに、忙しいと理由で魔法使いのお店に付いて来てくれないのだ。
「本当に・・・だめ?」
北風と太陽の理論で、私は目をうるうるさせながら、小動物のような瞳でキリエを見つめる。
「すいません・・・・・・」
駄目だった。どうやら、私の家は本当にバタバタしているらしい。私が転生してこの世界に来たけれどまだ両親に会っていない。だから、自由かつ大胆なことができているというのもあるけれど、婚約破棄されたなんて言ったら、両親はどんな反応をするのか想像できないし、今はまだ、顔を思い出そうとしてもまったく思い出せない。
(うーん、思い出すのにはなにか、法則があるのかしら?)
そろそろ、落ち着いてきたので、そういったこともじっくり考えるべきかもしれない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あああああっ!!!」
私を髪を掻きむしる。
お風呂だ、お風呂が足りないのだ。色々と髪の毛に艶がでる方法もあるらしいけれど、私はお風呂がいいのだ。お風呂欠乏症で発狂せずにはいられないのだ。
「うん、やっぱり。お風呂。41度くらいの熱いお風呂に入れるようになったら考えましょ」
私はドラム缶風呂のようなことを試そうとしたけれど、キリエに猛反対された。理由としては、外でしか入れないからだ。淑女である私が外で裸になるなんてありえないし、両親に首にされてしまうから勘弁してくださいと、泣きつかれてしまったので、残念ながら諦めた。
「よし、行ってみましょ。何をやるにしたって、初めてのことなんだから。どうせ、何かするなら、大胆に生きましょ」
前世ではそれとなく学生生活を送っていたくせに、こちらの世界に来てからはとても大胆な私。これもユーフェミアの気質のせいかもしれないけれど、そうだとすれば、私はユーフェミアが結構好きな性格だと思った。
(うん、フラれても、私は愛してあげるからね、ユーフェミア)
私は鏡の前でごまかした美しさの髪を見ながら、ユーフェミアを見つめると、良い笑顔で私を見ていた。
「うーん、いい天気ね」
「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」
「えー、不安だから、一緒に来てーーー、キリエーーー」
「ふぇん」
キリエはとても困った顔をする。
「冗談よ、任せて。お風呂に入れるまでは死ねないから」
私がそう言うとキリエは不思議そうな顔をする。彼女からすれば、私はお風呂に入っているという感覚なのだろうが、
(私はあんなぬるま湯はお風呂と呼びません)
と心の中で答えながら、ニコっと笑った。
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