第12話

「本当に順調ですか?」


 キリエの申し訳なさそうにしつつも、疑っている目。

 駄目だ。

 嘘はこれ以上付けない。


「順調じゃ・・・ありません」


 私は正直に伝えると、キリエはホッとした顔をして、


「そうですよね・・・びっくりしちゃいました。勉強嫌いのユーフェミア様が勉強を始めるって言い始めたのもびっくりしましたが、色々ありましたし……わかるんですが、勉強をするにしても、文字・・・読めませんもんね?」


(・・・・・・あっぶなーーーーっ)


 あぁ、謝って正解だったようだ。ここで、字が読めるなんて言ってしまえば、もっと疑われていたに違いない。


「ねぇ、キリエは文字読めたかしら?」


 私は本当は心臓バクバクなくらい焦っていたけれど、取り繕って余裕な顔でキリエに尋ねる。


「かっ、からかわないでください」


 照れながら恥らうキリエ。識字率が低い世界で平民で読める人は少ないのか、それとも貴族すら読める人が少ない世界なのか。それとも、魔法の字は特別な字なのか。色々考えることはありそうだ。


「誰に教わろうかしら?」


 私は自分で考えるふりをしているが、考える気はまったく0で、キリエの顔をちらちら見ながら、キリエからいい案が出てくるのを待った。


「うーん…そうですね・・・・・・ラインハルト様は教えるがお上手だと聞きましたが・・・ユーフェミア様っ!?」


 私はショックで、膝まづいていた。イージーゲームに行ける選択肢をミスったらしい。というか、あのサンドラが本当に主人公なんじゃないだろうか。あの子はきっと、ラインハルトに優しく教わりながら、魔法を教わり、天才と言われる魔法少女になるのではなかろうか。そして、魔法も幸せな身分と家庭を築く、約束されたハッピーエンドが待っているんだろう。というか、気を付けないと、私。ラインハルトとサンドラに処刑とか国外追放されそう。


「はぁ・・・」


「だっ、大丈夫ですよ。他にも何人もいますから。それもイケメンで」


 私がキリエを見ると、ニコリと笑う。この子、意外とあざとい感じなのかしら。でも、イケメンと言われると、なんだか、サンドラの攻略対象の男性たちな気がする。私の立場でそんな男性たちに話しかけて、大丈夫なのだろうか。


(いやいや、サンドラとラインハルトはあのまま結ばれるでしょ。さすがに…。婚約破棄させておいて、他のルートまで行くとか、ウィッチじゃなくて、ビッチでしょ)


「ユーフェミア様?」


(でも、二股で成功ルートだって2週目から許されるゲームもあるし・・・・・・)


「あのー、聞こえてますかーーーっ?」


(はっ・・・・・・まさか、禁断のハーレムルートということも・・・・・・っ!!)


 恐ろしい子。天然でたどり着くには0.01パーセント。攻略本無しでは絶対に到達しないと言われるハーレムルート。少しでもミスれば、すぐにバッドエンドになってしまうけれど、もしかしたら・・・サンドラなら……。

 考えれば考えるほど、サンドラが・・・・・・怖い。

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