学校で

「なー、ア、アカリちゃん、本、か、貸してくれ、ない?」


合ってんのか、これで。標準語。


「急にちゃんとかキンモ。ほんでなんなん、その語尾」


やっぱりや~~~~~っっっっ!!!!急に幼馴染にちゃんづけで呼ばれたらキモいよな。ほんで、ぎこちない標準語……しかも、またちゃんゆうてもうたし……っ!!あぁ、ああああ!! ほんま発狂しそう!!! めっちゃ、むずいやん! 標準語!


「な、なんでもない。ごめんごめん、アカリ、教科書貸してくれへん?」


すぐ戻ってもうた。俺のアホ!!


「はいよ」

「おおきに」

「え、なに、今度は急にコテコテやん」


ほんでその反動で普段使わんコテコテな関西弁が出た。


あかん。


「ありがとう、アカリ」

「うん、ええけど」

「じゃあね」

「……? ちゃんと授業までに返してや」

「分かってるよー!」

「? え、ちょ、今日も帰れるやんな?」

「うん! 勿論だよ! 玄関で待ってるね!!」

「は……?」


なんかすんごいテンション高い元気なお兄さんみたいになって去ってしまってんけど。まぁ……ええか。


その日からの帰り、俺は見よう見まねの標準語を一週間使い続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る