第42話 ユニグリフィスの正体
ルオウがこの世界から消えていくのをリムルは山の上から見つめていた。
暴れたかいがあって、ロープはほどけ、着地し、麻袋を掴みながらぼうっとルオウが穴に吸い込まれていく光景を見ていた。
「そうか、お前は先に帰れるようじゃな……良かった」
麻袋の中には変装用のキャップやランドセル、熱さまシート、モンスターシードが入っていた。
「我ももうすぐ行こう、それまでさらばじゃ、ルオウ」
涙を隠すようにキャップ帽を深々とリムルは被った。
× × ×
空は満天の星空が広がっている。ルオウが落ちてきた影響ですべての雲がかき消え、星が地上を照らしている。
『終わり、ましたね……』
回転を止め、煙を上げている三枚のブレードをしまうMT1。
「ああ、終わったな……」
全身を襲う脱力感を感じながら夜の空ボーっと司は見つめていた。
ルオウの姿はもう、ない。
ユニグリフィスが展開した空間の穴にのまれてイノセンティアへと帰っていった。
「お疲れさまでした。皆さん」
パルソーサーがコバキオマルの肩から降り、ユニグリフィスの隣に立つ。
ユニグリフィスは疲れ果てていたようで、隣にパルソーサーが立つとそちらへ向かって崩れ落ちるように倒れた。
「だ、大丈夫、か……」
心配で司は声をかけそうになったが、途中でやめた。
あれに乗っているのは誰だ?
ずっと父親の池井戸玲が乗っていると思っていた。思い込んでいたが、それだと時子の言葉とつじつまが合わない気がする。
隊長、とそう時子はユニグリフィスのことを呼び続けていた。
確かめる必要がある……!
司はコックピットハッチを開けて外に出た。
「白い
声を張り上げてユニグリフィスを問い詰める。
『司さん、何をやってるの⁉ みんな疲れてるんだからとりあえずはいいじゃない』
いや、よくはない。ここで逃がしたらもう二度と会うことができないかもしれない。
顔を見なければならない。親父の義骸を使っている他人を、どうしてローズ・G・デルタウッドとかいう隊長が部下の機体に乗っているのかを。
ユニグリフィスの首がわずかに持ち上がり、機体の胸部が輝いた。
出てくるのか―――?
ユニグリフィスの肩の上に光が灯り、光が人の形を作る。
「あなたの予想通り、私ですよ。貴方の担任教師、アール・ディモスです」
「へ?」
「え?」
予想外の人間が出てきて混乱する。
確かにアール・ディモスだった。普段つけている眼鏡をはずしてはいるが、スーツに身を包んだ担任教師。
よくよく思考を巡らせてみたら妥当な人間だった。パルソーサーに乗っていたのがシェアハウスをしている時子なら、ユニグリフィスに乗っている相手がアールでもおかしくはない、イノセンティア人であるボロは何度も出していたし、以前食堂で見た謎の短剣と同じものを時子が掲げて自分がイノセンティアの軍人であると証明していた。
「あ~あぁ、そういうことか……」
「え、何? 何なの? もしかして気が付いてたんじゃなかったの? アール・ディモスは仮の名前で、本当の名前はローズ・G・デルタウッドで、分隊隊長だったって気が付いていたんじゃなかったの? ねぇ!」
「はぁ、まぁ……ごめんなさい。疲れたから、とりあえず、解散しよっか」
反応に困り、疲れを思いだし、熱が冷めていった司は皆に解散を促した。
『了解……』
『はい、お疲れさまでした』
司はコックピットに戻っていき、マルチトルーパーの三機はガショガショと駐屯地へと戻っていった。
「ねぇ! ちょっと! もうちょっと何かないの⁉ 反応薄くない⁉ もう倒れそうな体を推して真実を告白しようと出てきたのに!」
「あ~、すいません、やっぱそれ明日でいいです。いつでも聞けそうなんで」
「ちょっと! ていうか警察の人たちも帰んないでよ! その腕、私の! 私の
一瞬だけMT1が振り返ったが、MT2に背中を叩かれ、結局は戻ってこずにそのまま駐屯地へと帰っていった。
コバキオマルも背中のバーニアを吹かせて鷲尾工業へと帰っていく。
「ねぇ、何この扱い! 私一番頑張ったんだけど! 一番今日頑張ったんだけど!」
「隊長、私たちも帰りましょう。ね」
パルソーサーの手が優しくユニグリフィスの肩に乗った。
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