第23話 警視庁特殊災害対応第二係
オオグモの胸部から熱戦が発射される。
銀色のロボットはオオグモとコバキオマルの間に介入すると、右腕を突き出し、腕の先についた三枚のブレードを展開し、風車のように回転させた。
銀色のロボットの右腕が、オオグモの熱戦を受け止めた。
『何だ⁉ 新手か?』
『姿は似てるけど、味方……?』
銀色のロボットの回転するブレードから空間のゆがみが波紋のように放出され、熱戦が霧散していく。
「凄い……!」
やがて熱線は止み、銀色のロボットは健在だった。
右腕のブレードを折りたたむ。
そのロボットはコバキオマルの半分以下の全長で、二十メートル足らずしかなかった。ひし形の鋭利な頭部をしており、背には二丁のマシンガン、腰に二本のナイフ、そして右腕以外は余分な装飾はない無駄のないフォルムをしていた。
が、右腕だけはそのロボットのフォルムとしては違和感があるほど大きく、腕には先ほど展開した三枚のブレードが折りたたまれ、装着されている。
銀色のロボットはオオグモからこちらへと頭を向けた。
『こちらは警視庁特殊災害対応第二係。その巨大人型兵器は人間が操作している、と想定していいのですか?』
スピーカーを通して銀色のロボットから声が聞こえる。
女の子の、声だった。それも聞き覚えのある。
「……
転校生の顔が頭に浮かんだが、首を振って打ち消す。今はそんなことを考えている場合ではない。
通信を鷲尾工場へとつなぐ。
「じじいどうする?」
『まさか、自衛隊が怪獣対策のためにロボットを作っているとは想定外じゃったわ……』
「俺もだよ。有能極まりないことだけどな」
『わしが話す、通信を直接スピーカーにつなげ』
権五郎の指示に従い、通信を外部スピーカーに接続する。
『あ~、あ~、こちらは鷲尾工業司令、赤川権五郎だ! この機体はわしらが魔物対策に作ったスーパーロボット、コバキオマルである!』
『司令というのはよくわからないけれど、つまりはそれを動かしているのは民間ということでいいの?』
『そうじゃ!』
『じゃあ今すぐこの場所から退避して、そのロボットが介入したせいでこっちの司令部が混乱している。現場にいられると邪魔になる』
『な……!』
「言われ、ちゃったな」
日本の治安維持を任されている組織が魔物に対応する武器を持って対処に来ているのだ。なんの許可も持っていない民間人はどうすることもできないだろう。
銀色のロボットは振り返り、オオグモへと向き直った。
『あれ一機だけで何ができるか。司、構わん! お前も戦え』
権五郎に発破をかけられ、戦おうとアクセルを踏む足に力を入れる。
が……、
「………いや、いいだろ」
メインモニターに映るのはオオグモと互角以上に戦う銀色のロボットの姿だった。
一回り以上体格が違うのに、奴の足の攻撃を受け流し、右腕の三枚のブレードの内、一枚を前に展開させ、剣のように振り回し、オオグモを切り付ける。
民家を踏み抜きつつも銀色のロボットはオオグモの攻撃をかわし続け、オオグモを翻弄する立ち回りを見せつけた。
警察が何とかできるのなら、俺たちはいらないんじゃないかな。
アクセルから足を離した。
『司!』
「!」
火伊奈がしかりつけ、その一言で曇りかけていた視界が晴れる。
銀色のロボットがオオグモに吹き飛ばされ、民家を破壊して転がっていった。
やはり体格が違いすぎる。パワーが不足しているのだ。
『ああああああッッ!』
銀色のロボットから女の子の悲鳴が聞こえる。
司はアクセルを踏んだ。
『司、二つのブーメランを合わせて力を籠めろ』
コバキオマルがオオグモへ向けて駆けだしている中、静かな声で唯が言った。
司は銀色のロボットを守ろうと必死だった。言われるがままに二本のブーメランを重ねる。
全身に脱力感が再び襲われる。
「何だ、この力……」
ちらりとコバキオマルの手元を見ると、蒼い光がブーメランから広がり、光の巨大なブーメランが生まれていた。
『
『投げろ! 司!』
投げろと唯は指示を出した。だが、
「当てられる、自信はないッッッ!」
背中のバーニアを吹かして飛び上がった。
地上のオオグモを見据えながら光の刀身を振り上げる。
「ブレイブ……ブレェェェイドッ‼」
オオグモへ向けて振り下ろしていく。
「ハオオオオ……!」
が、こちらを見上げるオオグモも胸の宝玉を輝かせ、熱線でこちらを迎撃しようとしている。
「あああああああ!」
やられる――――。
ガァン……!
銃声が、響いた。
オオグモの胸に風穴があき、光を集めていた宝玉が消失していた。
「エンドだッッ‼」
蒼い光の斬撃がオオグモを一刀両断した。
「ハオオオオオオオッッッ‼」
オオグモが悲鳴を上げながら黒い煙を全身から吐き出し消滅していく。
同時にコバキオマルのブーメランの先に展開された光の刀身も消えていった。
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