第24話 マルチトルーパー
司はオオグモの消失を見ながら周囲に目を走らせた。
「今のは……?」
コバキオマルの斬撃は間に合っていなかった。どこからかの援護射撃がなかったらコバキオマルはどうなっていたかわからない。
『司、四時の方向だ。反応が二つ。サブカメラで姿をとらえている……が、恐らく、さっきの自衛隊の仲間だ』
唯が状況報告をし、コバキオマルの体を向ける。
ビルの上に二つの機影があった。銀色のロボットとほとんど同じ、上半身が人間で下半身が蜘蛛の多脚型をしている機体。
『そこの民間‼ あぶねぇから下がってろって言われただろ!』
スピーカー越しの少年の乱暴な声が響き、
『MT1、無事なの? 応答をしてほしいの』
次に気の抜けるほんわかとした少女の声が響いた。
ビルの上から二機の自衛隊のロボットが降りてくる。
二機とも装甲の色は銀色でだが、細部が違う。少年の声がした方は背中に二本のキャノン砲が取り付けられ、少女の声がした方は両腕が鎌のような形をして蜘蛛よりはカマキリに近いフォルムをしていた。
二対のキャノン砲の先から煙が上がっていた。
「もしかして、さっきの砲撃は君が?」
『ああ、そうだよ民間。素人が戦場に来てんじゃねぇよ! 死ぬとこだったんだぞ!』
キャノン砲を背負った方の機体がすれ違いざま、コバキオマルをしかりつける。
「………ッ!」
司は何か言い返したかったが、何も言い返せなかった。
彼が言ってることは正論だ。倒したのは確かに自分たちだったが、下手をすれば死んでいた。
それが悔しく、ハンドルを持つ手に力がこもる。
『立てるの?』
『ありがとう、MT3。やはり、接近戦はなるべく避けた方がよさそうです。魔物のパワーは想定外でした』
手が鎌になっている機体が最初に来た右腕が肥大している機体を助け起こす。
『すこし、いいかな?』
唯がスピーカーを使って、三体の銀色のロボットに話しかける。
『君たちが乗ってるそのロボット。報道でも見たことがないんだが、一体何なんだい?』
『………』
三体のロボットは沈黙していた。時折スピーカー越しに『……いい……許可……』などと聞こえてきたので、司令部に許可を取っているのだろうと推測できる。
やがて、最初に来たロボットの女の子が口を開いた。
『我々の組織は先ほど述べた通り、陸上自衛隊特殊災害対応第一係。警察内の
「マルチ、トルーパー……」
銀色のロボットたち、マルチトルーパーはコバキオマルへと接近する。
『そちらもこちらの質問に答えていただきたい。が、今は現場の安全確保が最優先です。我々の誘導に従って速やかに……』
マルチトルーパーの上空に多数の黒い霧が見えた。
危険を―――直感的に司は感じた。
「上だ!」
『え……ッ!』
右腕にブレードが付いたマルチトルーパー、MT1は気が付くのが遅れたような声を出していたがすぐに反応し、空に向かって三枚のブレードを展開し、回転させた。
黒い靄が矢じりの形を作り、多数の黒い矢が三機のマルチトルーパーに降り注いだ。
『司! 後退しろ! こっちも狙われている!』
空を見上げると、コバキオマルへも黒い矢は襲い掛かった。
「クッ……何なんだよ! 一体……!」
両手のブーメランで矢を弾きながら後退する。
やがて矢の雨が止んだ。
コバキオマルも、三機のマルチトルーパーも健在だった。MT1が手のプレードをしまう。
「よくもバアルをやってくれたな……この世界の子らよ」
空から声が響いた。
空を見上げると、小さな魔法陣が浮いていた。
「あれは……?」
拡大してみると魔法陣の上に人が乗っていた。
金髪のマントを羽織った幼女と、蛇のような姿をした怪人物、梟人間、蛙の怪人が立っていた。
金髪の幼女―――どこかできいたようなきがする。
『あれは……魔王!』
権五郎が驚愕の声を上げる。
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