記録④

男は彼女を自分の車に乗せ、海沿いに県道を走っていました。ふと空に目をやるともう少しで夕日が海に飲み込まれそうです。デートで行ったカラオケでついついテンションが上がってしまい、気がつけば5時間近く歌ってしまった。このままでは今日の計画が水の泡になってしまいます。男は今すぐにでもスピードを上げたい気持ちを抑え、少しでも彼女を不安にさせまいと安全運転を心がけました。

男の気持ちを知る由もない彼女は窓の外から見える海の景色に見惚れています。

夕日がついに海に呑まれ出したとき、男たちの乗った車は何とか時間までに灯台の元へ到着しました。

男は彼女に降りるように言い、灯台のもとへ案内しました。

そこから見えた景色に彼女は息を呑みます。

あたり一面に広がる橙色の日本海が情熱的な赤い塊を半分まで飲み込んでいました。

彼女はその絶景に声も出ません。

「ずっと…連れてこようと思ってたんだ…ほら、夕日が好きって言ってたでしょ?」

「悠介さん…」

彼女は目を輝かせながら呟きました。

男はまだ彼女の顔を見るのに慣れてなくて、照れくさそうに目を逸らします。しかしそんなこともお構いなしに彼女の方から力一杯抱きついてきたのでした。

「これからもいっぱい夕日見に行こう!ずっとこれからも一緒に!」

可愛らしい少女のように顔いっぱいに笑みを浮かべ、彼女は男の胸に顔をうずめながら言いました。

夕日に染まる彼女の顔を見つめ、男は自分の頬は夕日よりも染まっているに違いないと思いながら改めて彼女の目を見つめ、力強く抱き寄せるのでした。

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