第12話 天職の儀
王都、大教会。この世界の全ての神を信仰するというなんともアバウトな考え方を持つ宗教、神火教の活動の一番中心となっているところである。
人も獣人もエルフもドワーフも、その他すべての種族は、神の火によって命の灯として生み出されたものとされ、それを絶えず途切れさせずに未来に繋いでいこう、という感じの教会だ。
この宗教に関しては特に神様たちからの信頼は厚いそうな。魔術神に聞いたときはこう言ってた。
「彼らは無益な争いをせず、平和を願う考え方をしているので、この世界を管理する神々にとってはとてもありがたい存在ですね。宗教として大きい分、争いは起こりにくいですし、何より教会を裏切ってまで争いをしようなんて考える国は少ないですね」
なんと教会が戦争の抑止力となっているそうだ。教会直属の兵、聖騎士や神官の力はどの国でも多大な影響力を持っているらしい。
そんな教会が最も国民と関わるのが、天職の儀だ。その名の通り、国民たちの天職を決める。天職を決めるには、その人の性格と身体の成長具合を見て、魔道具が決める。魔道具は天職を与えるだけでなく、スキルを一つ与える。その職業と魔術適性を鑑みて与えられるそうだ。
「それでご主人様、私は天職の儀を受ける必要があるのぉ?天職はないにしてもスキルはたくさんあるわよぉ?」
パンドラが気だるそうに問う。確かにパンドラは受ける必要がない。けれどちゃんとメリットはある。
「確かにパンドラはスキルがあるし、いたずらに魔王と正体を明かせば国はパニックになるだろうな」
「なら、何で天職の儀を受けるのぉ?」
天職の儀ではその人のステータスが表示されてしまう。だが、裏を返せばこういうことも言える。
「その魔王が奴隷となっていてこの国を防衛するための力となったら?」
―――――ようは使いようだ。魔王という肩書きは絶大だ。それは国家の運営をする上で避けては通れない外交問題にも影響を及ぼす。戦争をふっかけてくるような国に牽制ができる。交易においても強気な態度を取れる。メリットだらけだ。
「てことは…。ご主人様は、私を国の道具に使うのかしらぁ……?」
「人聞きの悪いことを言うな。少なくともパンドラをそういうために奴隷契約をしたわけじゃないから。そういう見方もあるよねって話で…」
「んもぅ。やっぱりご主人様は上手ね」
「何が」
「何って…ナニが?」
「ふざけてるなら叩くぞ?(ガチトーン)」
「ンンッ、ご主人様がドS……ハァッ、ハァッ…」
いよいよ何もしていないのに欲情(?)し始めたパンドラ。とてもじゃないがそこらの10歳児には見せることができない顔になっている。ちなみにだがレンのこの会話は無意識である。まさかパンドラが喜ぶ、上げて落とす…いわゆるアメとムチを使ってしまった。いっそ鎌使いから
そんなこんなでたどり着いた大教会はまさしく圧巻の一言で言い表せるほどだった。大きさもだが、その見た目もである。まさしく教会。
壁も屋根も白一色で汚れ一つない。こういうところは金の装飾などできらびやかな見た目をするものだが、そういう類は一切なく、あるのは彫られたシンプルなレリーフのみ。驚くべきはそのレリーフの数。レリーフで描かれる数万の花が所狭しと並べられている。その全ては歪な花もあれば機械で彫られたような精緻な花、小さな子供が描くようなデザインの花や素朴でありながらも命の輝きを見せる花。
決して職人達だけが作るようなものではない。教会が預かっている孤児達が作ったものもある。
「壮観ね、ご主人様…」
「ああ…なんというか…驚いて声が出ないな…」
教会を訪れたのが初めてであるレンとパンドラ。教会に集まる他の子供たちは「たくさん花のレリーフがあるな」ぐらいにしか思わないだろう。
「これ…教会が今まで預かってきた子供達が彫ったレリーフよねぇ…?」
「これ程の数の孤児達がここで育ったわけだな…。魔術神が教会を良いように言うわけだ」
なるほど。どんな人種でも差別せず、老若男女全てを救う。かつていた日本では差別はいけないことだと言われても差別はなくならなかった。理想でしかないと、笑われていたのだ。この国は、教会はその理想を本気で追い求めている。そのことを知ったレンは聖人とはこういう奴らのことを言うのだと改めて思った。
「ん?その口ぶりだとぉ、ご主人様は魔術神様と会ったことがあるっていうのぉ?」
「会ったも何も…。僕の師匠は
「――――ご主人様は、転生者なの?」
「あれ、今更だったか?」
そういえばこの5年間言ってなかったような気がする。驚くパンドラは首を傾げるレンを見て、諦めたように肩をすくめた。
「……まぁ、ご主人様だし」
「なんだ、言ってみろ」
『おい、お主。名前を呼ばれてるぞ』
頭の中でグリアドが呼びかける。耳を傾けると本当にレンが呼ばれていた。
「とりあえず、後でお仕置きな」
「はぁい。私、後でどんなことをされちゃうのかしら…。(´Д`)ハァ…(´Д`)ハァ…」
『教育を間違えたのでは?』
「言わないでくれ…」
レンはパンドラを視界から外した。周りから物珍しい目で見られる。
「おい、あいつってまさか…」「そうだぜ、カレン様とクリス様の…」「レン・グリタラット様よ…。あそこにいる女の子、レン様の奴隷かしら…」「レン様は何の天職を授かるんだ…?」「剣聖や賢者でもおかしくないぞ…!?」
少々の居心地の悪さを感じながらも教壇の前に進む。教壇の前に立つ司教がレンをずっと見ている。司教が教典を開く。
「汝の進む道はどこへと続く?天か、地獄か。汝は何を目指す?英雄か、魔王か。全てを選ぶには力がいる。汝は、一体何を望む?汝の魂よ、答えよ」
司教が言い終わるのと同時に教会のステンドグラスから光が差し込み、レンを照らす。
するとレンの頭にグリアドが喋るのとは異なる声が聞こえた。
【天職が与えられます】
【次のうちから天職を選択してください】
【剣士・農民・
内心で小さくガッツポーズをするレン。
(よし!鎌使いあった!)
もちろん、鎌使いを選択。
【鎌使いを選択します。よろしいですか?
YES/NO】
レンは迷いなくYESを押すとステータスが更新される。
【ステータス】
レン・グリタラット Lv1
天職:鎌使い 属性:星
筋力:40000 防御力:100 魔術攻撃力:
魔術防御力:5000 俊敏性:30000
体力:20000 魔力:30000
スキル 鎌術 鎌召喚 星魔術 なし なし
奴隷契約:パンドラ
内容:レンの命令は絶対遵守
おおー、スキルが3つも増えた。10歳になってステータスがだいぶ上がっている。鎌術はわかるし、星魔術も名前のとおりだろう。でも鎌召喚ってなんだ?
色々と不思議に思っていると、司教から声をかけられた。
「汝の進む道は?」
「まぁ、自分らしくいくさ」
不敵に笑うレン。その答えに司教は満足したように頷き、元の席に戻るよう促す。その次にパンドラが呼ばれる。
「次だぞ?」
「わかりました、ご主人様」
教壇の前に立つパンドラは一体何の天職を選んだのか。
【パンドラが天職:性奴隷を選択しようとしています。よろしいですか?YES/NO】
もちろん、NOで。選択肢を選ぶと恨めしそうにこちらを見てくるパンドラ。レンは顎で指示する。
【パンドラが天職:
これはまぁ、いいかな?パンドラのステータスを確認する。
【ステータス】
パンドラ Lv150
天職:超道化師 属性:感覚
筋力:7000 防御力:6432 魔術攻撃力:9500
魔術防御力:7451 俊敏性:5804
体力:6004 魔力:15400
スキル
奴隷契約:パンドラ
内容:レンの命令は絶対遵守
称号:禁断の魔王 トリックマスター
転移魔術と
ただ、新しく覚えたそのスキル、性技とはなんだおい。どこでそんなスキルを覚えた?!と言う面でも驚いた。
「パンドラ、新しいスキルについて詳しく聞こうか?」
「あ、ご主人様ぁ〜。新しく覚えたわぁ、非戦闘魔術。これでもっとご主人様を助けられるわぁ〜!」
「それは良かったな。それで、性技というスキルは何だ?」
何を当たり前なことを聞いているのかと頭をかしげるパンドラ。
「もちろん、ご主人様のために取ったものよぉ?」
「スキルの効果を教えろと言っていっているのだが?」
「スキルの効果としては魅了、精力強化、使役の3つが合わさったスキルね。発動した対象にその3つをランダムに付与させるスキルだわぁ」
「それは本当に必要なスキルか?」
「もっちろん!私がご主人様のために取ったスキルだものぉ!」
胸を張って言うパンドラ。大好きなご主人様に見せるその顔は恋する乙女のような顔だ。
(もう好きな
パンドラの献身に嬉しい反面、気恥ずかしさも感じる。
そんなこんなでレンとパンドラの天職の儀が終わった。
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幾日か休みを取ってました。近々テストが近づいているため、更新が遅れるかもしれません。
ちょくちょくと更新しています。
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