第10話 魔王討伐 2
前回の星堕という漢字を星墜としてしまいました。
すいませんでした。
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「『星堕』」
無数の星の弾幕が魔王を襲う。
もともとは小さな惑星、地球での月ぐらいの星を落とす魔導なのだが、その惑星を粉々に砕き、人の頭ぐらいの大きさにすると威力が少々減少するものの、操作性が格段に上がり、広範囲に被害を及ぼさない魔導になった。
「『さて、どんなものか…』」
「はぁ…はぁ…。あと少しで
「いってぇ…。まさかこれほどまでの魔術を子供が出すとは…」
魔王二人とも多少の疲弊はあるものの、まだまだ健在だ。
グリアドは地上へ着地し、魔王二人を睥睨する。
「『星の魔術を耐えるとは…。神の力が完全に回復していないのか、それともレンの身体が未完成のため魔術の威力が十全に発揮されていないのか…。
どちらにしてもまだまだ試したいことがあるしな』」
魔王二人はグリアドの一挙手一投足を注意して見ている。
「『さて、検証を始めるか』」
「…俺たちは実験のためのモルモットってか!いいぜ、やってやるよ!」
「……………」
ガスラは敵意を向ける。
一方パンドラは…。
いきなり現れた不思議な少年へ警戒した。しかもその実力はパンドラを軽く超えている。先の一撃でわかった。冷や汗がパンドラの背を流れる。だが、それに反してパンドラは…。
こんなかわいい少年がいるなんてっ!
……パンドラはグリアド(レン)に興味津々だった。
白銀の髪に銀色の光が瞳に宿り、あどけない顔に涙ボクロが乗っかっているというなんともかわいい少年だった。
パンドラのストライクゾーンにこれでもかと深々と刺さるグリアドの姿に脳が処理しきれず、固まってしまった。
「『二人まとめてかかってくるといい』」
「なめるなよ、人間!パンドラ、力を…ってパンドラ?お、おいパンドラ?だめだ、動かねぇ!」
「か、か、かっ、かわ!かわわわわわわわわ!!」
「『…お前だけでもいいからかかってこい』」
ショートするパンドラに困惑しながらも、いつ攻撃がかかってきてもいい様、反撃の体制を取るもののさすがに分が悪いと判断したのか、パンドラを抱えた。
「今日のところはずらかるとするか!ほら、パンドラ!早く転移魔導を展開しろ!」
「『逃げられると困るのだがな…。仕方ない、二人まるごと殺るか』」
「ちょっ!パンドラ!早く!」
「……転移魔術『テレポート』」
「おいっ!パンドラ!?俺だけ転移させてどーすんだよ!」
「うるさい」
「おい!おい!パンドラァァァァァァァ!」
黒色の魔法陣にガスラの巨体が包まれていく。あとに残ったのはパンドラとグリアドだけだ。
「『なんのつもりだ?二対一のほうが有利だっただろうに』」
「あなたにお願いがあるの…」
「『願い?命だけはと懇願するのか?』」
「それもあるけどぉ…。私がお願いしたいのはそんなことではないわぁ」
「『じゃあ何だ、貴様を見逃せと?』」
「私を……………私を………………」
深呼吸して、パンドラが大きな声で叫んだ。
「私をッ!奴隷にしてちょうだい!!」
「は??」
グリアドから出たのはなんとも気の抜けた呆れだった。
★
数分後、グリアドはパンドラから事の顛末を聞いていた。
「『なるほど…。新しい魔王の誕生を発見して報告するために来たと言うわけか。そのために街ごと潰す必要があったと』」
「そぉ。それで私達が派遣されたんだけどぉ…。正直ノリ気じゃなかったのぉ。星の魔王ってば魔王使い荒いしぃ」
「『また聞き慣れぬ言葉を…。星の魔王とは一体何だ?お前らを統率している存在なのか?』」
「そう。私達のリーダー的存在ね。私も星の魔王が戦っているところは見たことあるんだけどぉ…。あんまりに強すぎるから強く出られなくてねぇ。そこからある程度の雑務をこなしていたのだけれど…。少年君に出会って私、ヒビッと来たわ!心も体も全面降伏!煮るなり焼くなり好きにしてほしいんだけれど…できれば、その…少年君の奴隷にしてもらえないかなー、なんて思っているわぁ」
今の状況。見た目5歳の美少年に見た目10歳くらいの幼女(妖女)(魔王)が犬のように腹を見せて全面降伏のいを示しながら話している。ものすっごい薄着で。僕が5歳児で相手が10歳児とはいえ、目に悪い。
傍から見たら何だこれが飛び交うこと請け合いである。
「『なんにせよ、奴隷のことに関してはこいつに聞け』」
「へ?私あなたに聞いているんだけどぉ?」
「『見ればわかる。ほら、レン。起きろ。目の前に魔王が降伏しているぞ』」
急に一人で喋りだしたグリアドに何がなんだかわからないパンドラ。すると彼の身体からスッと銀色の光が抜けたかと思うと、その場に倒れた。
「うええっ!?少年君!?」
目の前で倒れた彼をどうしようかと慌てるパンドラを横目にレンが起き上がる。
「……。なんとなく外の様子はわかっていたけれど…。さすがに魔王を奴隷にするとかどうなんだろうか。社会的にやばいかなぁ」
「あ、あれ!?大丈夫なの、少年君?」
「僕は大丈夫だけど…。君が魔王なの?」
「あ…まだ名乗ってなかったかしらぁ。私は、禁断の魔王パンドラ。少年君の名前を聞いてもいいかなぁ?」
今更ながら名乗っていなかったな、と気づいたパンドラは軽く挨拶をする。もちろん、腹を見せて。
スッと目を逸らせたレンにちょっかいをかけるパンドラ。
「あっ。少年君、今、恥ずかしくなったのぉ?」
「そういうわけではない」
「そぉ」
話がまたそれる前にレンは名乗る。
「…僕はレンだよ。さっき戦っていたのはグリアドっていう相棒…相棒なのかなぁ…相棒というより…契約者かな」
「何か込み入った事情があるみたいだけどぉ…。それでそれで!どぉ!?私を奴隷にしてくれるのかしらぁ!?」
「奴隷かぁ…。どうだろ。ていうか、やけに奴隷にこだわるけど…。そんなに奴隷がいい?」
レンの疑問にパンドラはバッと起き上がって目を輝かせる。
「ええ!なんてったって少年君の奴隷だよぉ!?性奴隷になれたら最高じゃない!」
「せ、性奴隷…」
「毎日少年君と一緒にいられると思うと…あぁっ、考えただけでワクワクしちゃうわぁ!何が始まるのかしら!軟禁?手錠プレイ?なんでもいいわぁ!私、少年君と一緒ならなんでも!」
「うわぁ……」
レンはこの魔王を一般常識のある人だと勘違いしていた。だって、魔王だ。頭のネジが10本ぐらい外れていないとこんなことするはずがない。
このパンドラという魔王は拗らせた恋愛観と彼女自身の性癖、いわゆる大好きな人に嫉妬してほしい、占領してほしいという純朴(?)な願いごと拗れてしまったド変態の魔王だった。
できることなら目を背けて「アーッ!」と叫んで帰りたいが、放置なんてしたらパンドラは絶対ヘラる。そうなったときのこの国の未来は…。
そこまで考えてレンは現実逃避をやめた。何とかしてこのド変態の処遇をどうすべきか頭を悩ます。
「んー。普通に見た目は可愛いから、さっきの王都で起こった攻撃で家族を失ってしまったいたいけな少女、かなぁ」
「それ、私の設定なのぉ?」
「とりあえずどうにかしなければならないので。もうそろそろ異変を知った王国が視察しに来るだろうし…。とりあえず、パンドラの色々はまた後で考えることにしよう」
「私はどこまでもついていくよぉ、少年君!」
「途中でどっか帰ってもいいんだよ?」
「帰らないわよぉ!」
はぁ…とため息をつくレン。とりあえず王都まで戻るべく、パンドラに転移魔導を頼み、門の近くまで転移した。
★
王都西門。王都にある4つの門の中の一つで、その門にはおよそ100人ほどの警備兵が常駐している。
そこから数十メートル離れた丘に転移したレンとパンドラはゆっくりと門へと歩む。
すると門で見張りをしている警備兵がハルバードを向けてこちらを睨む。
「何者だ!まさか南西にいる魔王の手下ではあるまいな!?」
「えーっと…。僕はレン・グリタラットです。カリン母様とクリス父様の子供で…」
「えっ!?レン様!?何故こんな時に街の外におられたのですか!?」
驚いた様子で僕を見る警備兵。
「い、色々あってね…。特にこの子が困っていたようだから助けてあげていたんだ」
「そうでしたか…。今から魔王との戦いで戦闘の激化が予想されます!早く街に入って避難していただければと!」
「ありがとう。それじゃあ行くよ、ドーラ」
するとその瞬間、頭の中にグリアドが喋るものとはまた異なった声が響く。パンドラの念話だ。
(ドーラとは一体何なのぉ?私の名前だったりするぅ?)
(いきなりパンドラとか呼んだら、街は大混乱に陥るぞ。パンドラのドラから取ってドーラだ。何か文句でもあるか?)
(ないにはないけどぉ…。もうちょっと可愛い名前がほしかったなぁ…)
不満を言いながらもちゃんとついてきてくれるパンドラ。このまま王城に戻るべきか、カリン達が借りていた宿に戻るか。
そう思案していたとき、後ろから肩を叩かれる。
「何、ドーラ?」
「いや、私は何もしてないのだけれどぉ…?」
「へ?」
確かにドーラはレンの隣にいる。おかしいと思って振り向くとそこには…。
「レ〜ン〜?どうしてあなたがここにいるのかしら?王城で待ったいてくれていたら嬉しかったのにね?」
「カリン母様…」
そこにいたのは笑顔ではあるものの目が完全に笑っていないカリンと、そんなカリンを見てあーあと言わんばかりの顔をしているクリスがあった。
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おかしいなぁ、鎌使いの転生者というのに、鎌を使ってないな。おかしい。本当におかしい。
あとすいません。一日遅れました。
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