12
「ドン・キホーテみたいなヤツね」
吉田が感心したように感想を述べる。
「あの格安の量販店? 確かに派手なところは似てる」
「じゃなくてセルバンテスの……もういい説明するのめんどい」
「むう。じゃあこっちもいいですー検索するから」
平見がスマホを取り出して検索をかけているあいだ、四角く狭い部室には沈黙が下りた。高杉は事情を説明したが、それ以上のことはなにも口にしなかった。謝罪もなければ、大目にみてくれといった要請もない。ただ事実を述べ、黙った。
高杉はお嬢様の親御さんに雇われている身なので、物事の決定権はないのだろう。平見たちに迷惑をかけているのは確かだった。けれど平見はなにも苦情を言えずにいた。
引きこもりの少女が、何年も何年も経ちそれなりに大きくなって、少しでも外に出て太陽を浴び、自分の足で歩くことにした。
その理由がいかに理解し難く、奇々怪々なものであろうとも――
明るく笑み、しゃべる彼女を思い出す。
「ねえ、どうするのこの状況。ぜんぜん解決の糸口見つからないけど」
遅々として進まない状況に耐えかねたようで、吉田が横から口を出してきた。
「うん。これからも、突然あいつが神出鬼没に突然現れるのも困る。だからさ――考えたんだけど」
平見は、重い腰を上げ、のそりと席を立った。黒スーツを着こなしながらも、身を小さくしている高杉に向かって告げる。
「あの、ミス・テリアスお嬢さまって、今、何歳なんですか?」
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