6
まずは昨晩11時半の映像。戸締まり係のメイドがいそいそと離れにやってくる。離れに飾られた骨董品の数々に異常がないのを目測で確認してから、出ようと扉に向かうと、ふいにニャーンという声。黒い塊がそろりと、ドアの隙間から室内に入ってくる。野良らしき一匹の猫が迷い込んできたのだ。
猫好きのそれと分かるメイドは瞬時に心奪われ、猫に近づく。すると猫はすぐにきびすを返し、再びドアの外へと。
そのままドアを半開き状態で放置したまま、メイドはいなくなり、戻ることなく夜中に突入した。鍵のかけ忘れである。
「あっ! あとで戻ろうと思っていたのに忘れて寝ちゃいました……」
当人のメイドが恥ずかしそうに顔を覆う。
さらにカメラの映像は超倍速で進み、夜明けになる。明け方、開いたままのドアをくぐって再び現れたのは昨晩の猫だった。サイズ・色とともに同じで、同一猫だろうと推測できる。
黒猫はここが気に入ったのか、飾り棚に飛び乗ると、優雅に骨董品のそばを優雅に歩く。棚から棚へとジャンプしたはずみに、台に固定されていたはずの例のお椀が滑り落ち、床へと落下。早朝なので誰もその音は聞いていない。
これがこの事件のすべての真相だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます