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――監視カメラの上映会が終わると、一部始終を見ていたミス・テリアスがうつむき加減になって、なにやらふるふると悔しそうに顎を震わせ始めた。
「なあ。犯人、おまえじゃなかったようだが……」
この女がどんな目的でやってきて、謎の言動をしているのか。平見は多少の興味を覚えた。
「ふふふふ、みなさん早とちりですわね! 確かに猫が犯人に見える。それが罠なのです! この猫こそ、わたしが手懐けて飼っているAI猫! 徹底的に教育されて、人間よりも頭がいいのです。彼は私が送りこんだ刺客だったのですわ。つまり親玉はこのわたし! わたしが犯人なのです!」
「――あの子、近所の野良猫なんです。いつもかわいがってるので、つい気が逸れちゃったんですよね」
ミス・テリアスの言葉を全無視して、メイドは反省の色を浮かべて微笑んだ。
「でも戸締まりのミスをした私が原因です。旦那様に謝ってきます……」
けっきょく、メイドは損失分の賠償金を請求されることもなく、許容され、館にとどまった。佐藤の伯父さんは、骨董品にも増して無類の猫好きだったのである。
これで事件は落着した。と思いたいところだが、こんなしょうもない事件よりも更に謎の存在がある。突然現れて自分が犯人だと名乗った、あの女のことだ。一体なんの目的なのか。
「なあ、あんた――」
平見が彼女に声をかけようとする。
いつのまにか、突風のように、ミス・テリアスとそのお付きの人物は消えていた。
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