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「あれ? もしかして……キミ、聡子おばさんの」

 部員の佐藤がふるえる指で指摘しようとすると、彼女は目をつり上がらせた。

「わ、わたしは従姉などではありませんわ。ミス・テリアスです!」

「なんだ。佐藤の従姉なのか」

「だからちがうって!」

 はずむ息を整えてから、ミス・テリアスは再び背筋をすっとのばして、己に視線を集めさせた。

「いいですか、伯父さんの百万円相当の壷を割った犯人は――」

「お椀だけど」

「ここ、細かいことはいいでしょう、だまらっしゃい!」

「というか伯父さんって言っちゃってるし」

 長くきれいにのばした爪で、びしっと指さして、ミス・テリアスは平見に叫んだ。

「よぉく聞きなさい坊や。犯人はなんと! 聞いてびっくり! このわたくし、ミス・テリアスなのですわ――!!」

 監視カメラの準備整いましたー、と使用人が皆に声をかけ、用意されたノートパソコンで、超倍速再生が始まった。

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