4

 なぜかここに、新たな登場人物である人影がふたり現れた。

「――盛り上がっているところ失礼。おじゃましますわ」

「え? 誰?」

 平見がぽかんと口を開ける。

 当然のような顔をして洋館に闖入してきたのは、ふたりの女性だった。

 ひとりはまだうら若く、ベージュ色の髪をハーフツインテールにした美女だ。肩だしのワンピースに薄手のショールをかけ、10センチくらいの高いヒールサンダルを履いている。ツカツカと誇らしげに音を立て、まっすぐに平見たちに向かって歩いてきた。その斜め後ろには、真夏なのに真っ黒いスーツの上下を着ている淑女が控えていた。

「わたくしの名は『ミス・テリアス』――こっちはお付きの高杉ですわ」

「はぁ」

「事件のあるところに、ミス・テリアスあり! わたしがきれいに解決してみせましょう」

 今にも高笑いしそうに腰をそらすが、特に声は出さずに、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る