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 洋館の離れに、豪邸の持ち主(佐藤の伯父)の趣味で、貴重な骨董品ばかりを収集し飾っているぜいたくな洋間がある。うっかりコレクションを触って落とすわけにもいかないため、平見たちはその場所には一切近づかないようにしていた。

 しかし伯父さんが日課の散歩から戻ると、ドアの鍵があいていて、時価五十五万円相当のお椀が落ちて割れていたというのだ。中国唐時代の陶磁器で、かなり希少な深い緑の色合いをしていて、クリーム色の細やかな紋様が練りこまれている。

なお、窓はすべて閉まり、鍵もかかっていた。

 伯父さんはショックで寝込む。平見たち高校生四人と、屋敷の使用人三名――計7人は、古い洋館のリビングに集まっていた。長方形のテーブルの席に着くが、用意された紅茶には誰も手をつけようとしない。

 全員の顔を見まわしてから、平見は口火を切る。

「この中に犯人がいる! ――とでも言いたいところだが、まあ、盗むわけでもなく故意に壊す理由なんてないだろう、犯人は風とかだろう。メイドさんが窓とかの施錠忘れたんだろう」

「いや、風って……」

「昨日も今日も、強風なんて吹いてなかったけど」

「だいたい窓は鍵、閉まってたんでしょ」

 部員たちがあきれた様子で口々にツッコミをつぶやく。

「あ、じゃあ地震?」

「地震もなかったけど」

「とにかく、まあ、そういう自然なやつだ」

「もっとまともな推理しなさいよ平見」

「仕方ないだろ、俺は名探偵じゃないんだから」

 平見たちがやいやい言っていると、使用人の長と思しき中年男性が口を開いた。

「旦那様は念のため、離れに監視カメラを設置しています。今からここにいる全員で証拠の現場を見ましょう」

「……最近はカメラもやすいし、性能もいいからな。ばっちり犯人が映っていることだろうなぁ」

 使用人たちが監視カメラの再生準備をしていると、館のチャイムが鳴った。

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