第26話 作戦会議(仮)とアウトライン

 とりあえず作戦会議(仮)ということで、樹と花奈に向き直り俺達はフードコートの一角でひっそりと四人集まって今後の方針をどうするか決めていた。


「とりあえず、さっきの奴らの名前は…えっとバッドウルヴスだっけ?そいつらについて調べるにしても、どうするんだ?駐車場やゲーセンとは言っていたが…今から向かうか?」


 俺がそう問い質すと、樹は不敵に笑い、花奈の方へと目配せすると言った。


「花奈ちゃん、持って来てるかしら?」


 と、樹が言うと花奈は一瞬で理解したのか、カバンの中に手を突っ込み、ガサゴソと中を漁ると、タバコの箱の半分くらいの大きさで、固定用の薄いネオジム磁石が付いた黒色の厚さ二センチくらいの板を取り出した。


「じゃっじゃーん!発信機~!飲み会のノリで買って放置してたやつ~!」


 テッテレーと効果音でも付けてやれば完全に某猫型ロボットである。


 しかも声真似付きだ。


 カバンから勢いよく取り出したそれを見せ付けてくる花奈の目はイキイキとしていた。


「どんなノリだよ!つか、いつ使うんだよ!」


「今です!」


「はぁ~…」


 得意げに見せ付けてくる花奈は、小型の板を何度か操作するとスマホの画面にアプリを表示させて、現在位置であるショッピングモールに赤いポインターが表示されているのを確認させてくれた。


「このアプリみんなで共有すれば、やつらのアジトが分かるっす!」


 と、花奈はドヤ顔で胸を張る。


 奇抜な髪の色をしているが、まさか発信機まで持ってるとは…ギャルのノリと行動力恐るべし。


 まあ、それはそれとして釈然としない。


「一応言っとくけど犯罪だからな?」


 この国では一応GPSを売ったり買ったりする事自体は別に違法でも何でもないのだが、その使用用途によって犯罪か否かの線引きがされているのだ。


 そんなこと言うと何でもそうなのだが、チェーンソーで木を切るのは合法だが、人を切るのは犯罪というのと何も変わらないのだが、要は使い方である。


 大まかに言うと、自分の持ち物にGPSを付けて、物忘れや盗難の予防に使う分にはセーフだが、他人の持ち物や浮気調査で相手の敷地に入って車やバイクに付ける事は犯罪になる。


 これは住居侵入罪…平たく言うと不法侵入にあたる可能性があるし、他にもプライバシー権の侵害になったりする。


 その為、探偵として仕事で使おうとしても浮気相手ではなく依頼主との共同財産である場合のみ、車両に取り付けたりして使ったことはある。


 もちろん浮気調査とはいえ過度な監視をすると、これとは別にストーカー法違反等の別の犯罪行為になる可能性もあるので、便利ではあるがリスクも高い割とシビアな機械であるという認識は持っておく必要がある。


 今回の場合は間違いなく調査という名の監視であって、自分の持ち物に付けるというわけでもない。


 完全にアウトなパターンだが、はてさて。


「そっかー良いアイディアだと思ったんだけど…となると、地道にストーキングするっすか?ちゃちゃっとあいつらの乗り物にでも張っ付けて、バレなきゃ大丈夫だと思ったっすけど~…?」


 と、花奈は手に持った発信機を眺めながら、人差し指と親指で挟んでくるくるともてあそぶ。


「監視追跡尾行もこれも十分ストーカー行為でアウトだ。その辺はなんとでも言い訳できるからまだいいとして、身バレした時のリスクがデカい。それに駐車場にも監視カメラがあるから取り付ける瞬間を撮られてたらアウトだ」


「確かにそうね、記録されるリスクは高いわね…となると、どうやって追跡するのかしら?私コレ使うのが無難だと思ってたから、リスク承知で行動する以外にないのかしらね…」


 樹も眉を顰め、腕を組み思案するが、良い答えは持ち合わせていない様だ。


「いや、発信機自体のアイディアはかなり良い線いってると思うぞ?」


 要はバレなければいいのだ。


 俺も発信機を使うこと自体は考えてはいた。


 実際に仙狐水晶を盗んだ犯人の手がかりを見つけたとして、肝心の仙狐水晶のありかが分からなければ骨折り損のくたびれ儲けだ。


 その為犯人を見つけた場合もある程度は泳がせて、在処を特定してから動こうと思っていた為、その手段の一つではあると考えていた。


「四季ちゃん、何かいいアイディアあるかしら?」


 と、樹が腕を組み直し鋭い眼光を向けて俺に問い質す。


「要はバレなきゃ犯罪じゃない。バレずに発信機をし込めればいいわけだから…」


 休日の真昼間のフードコートで何という話をしているんだ、というツッコミは置いといて。


 俺は昨日の事を思い出していた。


 初めて会った時のコンの反応、そして初めてコンに会った時の花奈の何気なしな行動、それと久那妓さんの発言だ。


 一個目の初めて会った時のコンの反応だが、基本的に土地神は普通の人間に認識することは出来ない…ハズだ。


 完全に顕現してしまっている今は認識できているのだが、顕現しなければどうだろうか?


 これは、コンが初めて俺に遭った時にぶつぶつと言っていた独り言を根拠にしている。


 次に、花奈が神社の境内で写真を撮った時、あの時はピンボケしていてぶれている様な感じになっていた。


 だが、昨日コンビニで写真を撮った時はしっかりと撮れていた。


 恐らくしっかりと顕現しており、認識阻害の力で普通の子供として認識できていたからこそ、写真にもちゃんと写っていたのだと思う。


 これが二つ。


 最期に久那妓さんの発言。


 認識阻害の力が働いて、可愛い子供くらいにしか認識できないと言っていたが、その認識阻害の力をフル活用して、カメラに認識されないレベルまで力を高めたらどうか?という仮説だ。


 というか、力を使うというよりも認識阻害の力を解除して、そもそも認識できなくしてしまえばいいのでは?というのが俺の考えだった。


 これが可能なら大丈夫なはずだ。


 だが可能性の話であって、定かではない。


 一応コンに確認してみる価値はあるだろう。


「ちょっと試したいことがあるんだが、良いかコン?」


 と、先程から俺達の真剣な話し合いに退屈そうに突っ伏していたコンに声をかける。


「ん?」


 と、ペタンと倒れていた耳を右耳だけ起こしコンは顔を上げた。


「どうしたのじゃ、四季?」


 と、こちらの様子を不思議そうに伺うコン。


 俺は続ける。


「なあ、最初俺とあった時見えているのか?とか、触れるのか?とか言ってたよな?覚えてるか?」


 俺がそう言うとコンは一瞬考え込む様に首を傾げると、瞳をチラッと上に向け、すぐにこちらに視線を戻す。


「おお!そうじゃ!確かにそう言ったぞ覚えておる…じゃが、それがどうしたのじゃ?」


 と、相変わらず不思議そうにこちらを覗き込み、クエスチョンマークを顔に浮かべている。


 俺が出した結論はこれだった。


「コン、お前って姿消せたりする?」


 おもむろにそう尋ねると、コンは顎の辺りに手を当てて首を傾げると、二、三回瞬きをして「んー?」と、唸っていた。


 樹と花奈はその問いかけにぽかんと口を開いて、呆れた顔をしていた。


「え?」


「何言ってんの?」


 と、各々が口を揃えて訝し気な目で見てくるが、俺は気にせずコンの言葉を待った。


 時間にして五秒位間があったが、ようやく結論を出したコンは口を開く。


「うむ、出来るぞ!」


 と、言い放つ。


 出来るのかよ、神様半端ねえな!


 俺は心の中でガッツポーズすると、落ち着く為に一度深く息を吐き、吸い込む。


「よし、ならコンに付けさせればいい!そうすれば身バレの心配もないし行けるな!」


 その言葉に二人共開いた口が塞がらない。


「ワシが何かするのか?」


 と、コンは相変わらず状況を理解できていない様子だが、ちゃんと説明する必要があるな。


「ああ、コンお前が上手くできたら万事解決で、仙狐水晶が見つかるかもしれないぞ?」


「おお!それは本当か!?それなら、ワシ頑張るぞ!」


 ふんすふんすと鼻息荒く、コンは先ほどまでの態度とは裏腹にやる気に満ち溢れていた。


 とりあえず、まだ仮説の段階である為コンの力を借りるとしても試してみる必要はあるな。


 そうと決まれば善は急げだ。


 俺は立ち上がり、皆に着いてくる様に指示すると席を立つのだった。


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