金の鳥

あめちゃん

第1話 社会の歯車

キーンコーンカーンコーン。

4時限目終了のチャイム。学校生活という監獄の中で誰もが楽しみにしている時間であろう昼休み。


チャイムと同時に学食へ向かう者、仲のいい友達と弁当を広げる者、授業の予習、復習をする者。


様々な人間が入り交じる時間。

束の間の自由を手にすることができる時間。


そんな時間が僕は嫌いだ。


「雄一!」


僕の名前を呼ぶ声。声の方を見るとそこには幼なじみの高嶋和香がいた。


学校で唯一僕に声をかけてくれる人物だ。


家が近所で小さい頃から遊んでいた。

学校で浮いている僕を可哀想だとでも思って声をかけてくれるのだろう。


「一緒にご飯食べよ!」


彼女の純粋無垢な明るい声が教室中に響き渡る。


ザワつく教室。周りからの視線。

居ても立っても居られず彼女を人目のつかない屋上へと連れ出す。


彼女は驚いた顔で僕に声をかけた。


「何か悪いことでもしちゃった?」


「嫌、別に…」


僕は素っ気ない態度で返事をした。


無言の時間が続く。


程なくして彼女が口を開く。


「高校3年生にもなってそんなんじゃ楽しくないでしょ!最後ぐらい学校生活楽しもうよ」


学級委員も務める彼女のことだ、僕みたいな生徒が気になるんだろう。


でも…僕は皆で仲良くお手手繋いで楽しく過ごそうなんて思わない。

そんな上辺だけの関係なんて僕にはいらない。


僕は優等生の彼女にこう尋ねた。


「和香はどうして学校に来るの?何の為にここにいるの?」


彼女は少し呆れた顔をしているように見えた。


「どうしてって…。それは、将来の為じゃないかな?将来、良い大学や会社に入って、カッコイイ旦那さんを見つけて幸せな家庭を築くの。その為の今なんじゃないかな?」


そう彼女は答えた。


おそらく、学校の生徒、先生に同じことを聞けば同じような答えが返ってくるだろう。


"将来の幸せの為"


…果たしてそうなのだろうか。


この学校という檻の中で僕達は個性という武器を奪われ、社会という歯車のパーツの一部に変えられる。


将来という暗闇の中を手探りで進み、たどり着いたゴールが社会の歯車の一部だとしたら僕は果たして幸せだと思うのだろうか…


幸せって何だろう。自由だから幸せなのか?

だとしたら空を飛んでいる鳥たちは自由に飛べて幸せだろう。反対に人間に飼われているペットたちは自由に行動も出来ず不幸せだろう。


そんなことを考えながら1日が終わっていく。

頭の中をぐしゃぐしゃかき混ぜられる感覚。


僕の人生には"幸せ"では無く"絶望"の2文字がお似合いだ。




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金の鳥 あめちゃん @ayato0627

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