6 超弩級戦艦エリュシオン
ルーンブレイカーのブリッチにいる、マノス司令と戦闘主任の2人が交わす視線が、妙に艶っぽい。
気にはなったが、深入りすると碌でもないことになると、直感で感じ取たレインは、ポーカーフェイスを保って、上司であるマノスへ、報告を行うことにした。
「司令、艦隊旗艦エリュシオンと合流します」
「艦外映像を出してちょうだい」
ブリッチに用意されている司令用の席に座るマノス司令の命令によって、艦外映像が投影される。
映し出されるのは、漆黒の闇と星々の白い光のみで構成された、宇宙。
いかに超弩級戦艦とて、現在の距離で、直接光学視認するのは難しい。
ブリッチのオペレーターが拡大表示を行うことで、エリュシオンの巨大な艦影が映し出された。
超弩級戦艦エリュシオン。
マノス・ビスマート司令率いるエリュシオン艦隊の旗艦であり、その全長は1700キロメートルに達する、規格外のサイズをしている。
艦隊と同じ名を付けられたこの宇宙船は、既知の銀河文明において、他に並ぶもののない巨大さを誇る。
21世紀初頭の地球の造船技術からすれば、全長3キロのルーンブレイカーとて巨大な船になるが、そんなルーンブレイカーすら米粒にしかならない。
人工天体と呼んで差し支えない巨大艦艇が、エリュシオンだ。
その性能は、大きさだけに留まらない。
船の外壁装甲は、最新技術である中性子装甲版で分厚く作られ、防御能力は対惑星兵器の直撃さえ受け止めるほど。
間違っても、宇宙空間に浮かんでいる小惑星をくりぬいて、内部に宇宙船として必要な設備を詰め込んだだけの、低レベルな技術で作られた艦船とはわけが違う。
火力面に関しても、直径100メートルの超高出力中性子砲を主砲とし、他にも数多の特殊兵装と、艦全体で一万を超える火砲群が装備されている。
これほどの火力と防御力を有する戦闘艦は、他に類がない。
西野誠と言う人間の魂を食らったマノスしか知らないことだが、この船こそがMOD環境下にある『Eternal Galaxy』において、エンドコンテンツたる最強の戦闘艦なのだ。
この船の戦闘能力を超える戦闘艦など、他に存在しない。
ルーンブレイカーのブリッチに映し出される、巨大なエリュシオンの姿を見れば、誰もが思わず動きを止めて、その姿に見惚れてしまう。
艦隊に所属している者にとって、この船こそが最大の誇りとなる。
見ている者の中には、むろんマノスも含まれる。
ただ、彼女が抱く感想は、少しずれていた。
「黒って目立たないわね」
かつてエリュシオンは純白に塗装されていたのだが、黒色の塗装の方が、わずかながら艦のステルス性能が上昇する。
誤差みたいなものだが、確かに性能が向上する。
実用的な理由で、エリュシオンは黒く塗装されていた。
「光学視認だと、宇宙の闇と混ざって目立たないわね」
一応艦内から漏れ出る光が、白くチカチカ明滅しているものの、それだけではエリュシオンの姿が目立たない。
「やっぱり白に戻した方がいいしら?」
マノスがそんなことを考えている間も、ルーンブレイカーはさらにエリュシオンの船体へ近づいていく。
「こちら第7編隊長艦ルーンブレイカー、旗艦エリュシオンへの着艦許可を乞う」
『こちらエリュシオン管制。駆逐艦ルーンブレイカーの着艦を許可する。
「ルーンブレイカー、了解」
ルーンブレイカーとエリュシオン間で通信が行われた後、エリュシオンの船体の一部から、宇宙空間に向けて光のラインが現れる。
そのラインに沿って、ルーンブレイカーは船体を動かし、エリュシオンの船体へ向かって進んでいく。
エリュシオンの黒い船体の一部が開いて、艦内へ続く通路が現れる。
エリュシオンはその巨大さから、内部に駆逐艦隊を収容できる空間を有しており、ルーンブレイカーは、収容スペースへ向かって進路を取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます