第1章
1 『Eternal Galaxy』
『Eternal Galaxy』は、銀河系を舞台にしたSFシミュレーションゲームだ。
舞台になる銀河系は、ゲーム開始時にランダム生成されるため、一つとして同じ世界が作られることはない。
銀河内には星系を丸ごと支配している星系国家や、さらには複数の星系を支配している星間国家が、当たり前のように存在している。
近未来SFでなく、宇宙を舞台にしたゲームだ。
ゲームの始まりは、プレーヤーが所持する一隻の宇宙船から始まり、広大な銀河系へ自由気ままに旅に出るところから始まる。
時に宇宙海賊と戦い、時にステーション間を巡って資源交易を行い、富を得ることができる。
他にも、小惑星やガス星雲から資源採掘を行い、これも売却することで資金を得られる。
あるいは自動生成されるクエストをこなすのもいいだろう。
RPGよろしく、○○というアイテムを持ってきてだとか、○○星系まで宇宙船で運んでくれなんてクエストが多い。
指定座標にいる宇宙海賊の討伐なんてクエストも存在する。
そんな宇宙を旅してまわる中で、プレーヤーは時に巨大勢力同士の艦隊が対峙する、戦場に出くわすことがある。
何十、何百と言う数の宇宙戦艦が戦う様は壮大だが、そのような戦場にたった1隻の宇宙船で入り込もうものなら、たちまちのうちに破壊されてゲームオーバーだ。
だが、戦場で戦っている艦隊の宇宙船も、当然のように破壊され、周囲の空間に取り残されたままになっている。
そんな破壊された宇宙船に乗り込んで、物資を回収して回る、資源イナゴプレーも可能だ。
艦隊がしのぎを削って戦う戦場は危険であるものの、破壊された船から得られる資源は膨大で、売り払うことで莫大な富へ変えることができる。
『Eternal Galaxy』では、序盤の金策は艦隊が戦っている戦場で、資源イナゴするプレーヤーが多かった。
というか、序盤はこれが一番確実な金策です(キリッ)
そして稼いだ資金を使って、より上位の宇宙船に乗り換えることができる。
購入できる宇宙船の種類は様々で、高性能な戦闘艦を手に入れれば、宇宙海賊相手の戦闘で稼ぐことが容易になる。
破壊した宇宙船の残骸を回収し、時には賞金首になっている海賊を狩って、資金を稼ぐといいだろう。
あるいは大型の交易船を手に入れれば、小型の宇宙船とは比べ物にならない資源を積み込むことができ、様々な勢力間を渡り歩いて、資源交易で稼げる。
それまでの小型船で稼いでいた額とは、けた違いの利益が出るようになる。
そして、プレーヤーが所有できる宇宙船は、1隻に限定されていない。
複数の艦船を入手すれば、それぞれの船に
プレーヤーが操っている宇宙船に、艦隊の船を追従させれば、何十隻もの宇宙船を従えた、大艦隊での行動が可能になる。
この状態で宇宙海賊相手に戦闘を挑めば、圧倒的な戦力で蹂躙することができる。
はたまた大勢力相手に艦隊戦を仕掛け、艦隊対艦隊の、大規模宇宙戦闘を行うことだってできる。
宇宙船1隻の頃には歯が立たなかった相手でも、艦隊を用意できれば、互角以上の戦闘が可能だ。
あるいは戦争より平和プレーを望むなら、交易船を大量に従えての交易だっていい。
何十隻もの大型貨物船を従えての交易となれば、大型船1隻で稼いでいた頃の金額がはした金にしか見えない、巨大な利益を生み出すことができる。
このようにして、資金を稼ぎまくり、新たな宇宙船を購入していくことで、さらに艦隊の規模を拡張していくことができる。
この頃になると、プレーヤーは宇宙船の操縦をするより、艦隊に所属している船に、様々な指示を出していくことになる。
特定の宙域への移動指示に、戦闘指示。
あるいは勢力間での交易の指示だって出すことができる。
資源採集をさせて、それの売買だって、指示ひとつ出しておけば、あとはNPC《クルー》が勝手に行ってくれる。
一度設定すれば、NPCたちが自動で資金を稼いでくれるので、あとは放置しているだけでウハウハだ。
そんな『Eternal Galaxy』の世界は、非常に自由だ。
このゲームは、最初はプレーヤーの操作する1隻の宇宙船から始まり、やがては艦隊運営ゲームになる。
だが、そこからさらに宇宙ステーションを建設することが可能になる。
宇宙ステーションには、居住区画や資源加工などの設備があり、ここでは宇宙船のパーツや燃料などを生産することができる。
これらの生産物を売却することで、利益を得ることができる。
これまでは他の勢力が生産した交易品を売買していたのが、自前で交易品を製造できるようになるので、交易で得られる利益が、それまでよりさらに良くなる。
ただし、そんなのはほんの序の口。
宇宙ステーションプレーの醍醐味は、交易品の製造・販売ではなく、各種の製造設備を増設、拡張し、突き詰めていくことによって、やがて自前の宇宙ステーションで艦船を建造できることにある。
それまでは、他の勢力から宇宙船を購入していたのが、自前の宇宙ステーションで建造設可能になり、わざわざ他勢力から宇宙船を買う必要がなくなる。
当然、自前で宇宙船を作る方が、他勢力から購入するより圧倒的に安く作ることができる。
そして、安く作れるようになった宇宙船を生産していくことで、さらにプレーヤーの艦隊戦力を増強できるようになる。
そして増強しまくった戦力の使い道だが、それはずばり、他勢力が領有している星系を武力で奪い取ることだ。
銀河系内にある各星系には、それぞれの勢力が領有していることを示す、防衛ステーションと呼ばれる宇宙ステーションがあり、その戦力は相当に高い。
だが、それ以上に圧倒的な艦隊戦力を持って防衛ステーションを攻略、占拠すれば、その星系をプレーヤーが奪い取ることができた。
ここまでくれば、ゲームの内容は艦隊運営やステーション経営から、国盗りゲームへ変貌を遂げる。
最終的には、銀河系にある他勢力に喧嘩を仕掛けまくって、大規模艦隊戦を繰り広げ、防衛ステーションを占領していくことで、領土拡張をし続けることができる。
漆黒の宇宙空間を背景に、大量の宇宙戦艦から放たれるレーザー兵器の数々に、質量弾兵器。
それらの攻撃を受け取るたびに、光り輝く宇宙戦艦の防御シールドの光。
それらが何十何百と一度に発生する大規模艦隊戦は、ゲームにおいてもっとも見どころのある光景だ。
「このまま銀河系全てを我が手に収めてくれる!」
そんな中世風ファンタジー世界の魔王ならぬ、悪の銀河帝国皇帝みたいなセリフを口にしたくなってしまう。
だが悲しいかな。『Eternal Galaxy』は、大規模艦隊戦をすれば、PCの処理落ちで常時かくついた。
また征服戦争を繰り返して領土を拡張しまくり、ステーションを建設しまくっても、やはり処理落ちが発生してしまう。
戦闘をしていなくても、常時処理落ち状態だ。
勢力拡張と比例して、最終的にはフリーズしているのではと疑いたくなるほどの負荷が、PCにかかるのだ。
ずばり、『Eternal Galaxy』とは何でもできる自由なゲームだが、最終的な敵はPCの処理性能に帰結する。
そんなゲームを飽きもせず、20年もやり続けたのが、俺だ。
それも『Eternal Galaxy』は、洋ゲーだったため、日本のゲームと違って、プレーヤーがゲーム本体のプログラムに改編を加える、MOD開発の環境が盛んだった。
俺は『Eternal Galaxy』に様々なMODを追加しまくって、
MODによっては、ゲーム難易度を低下させるものもあるが、そんなものは邪道。
ただひたすらに面倒と困難が増え、ゲームの世界に没入できる環境を、MODで整えた。
そしてそれらの高難易度MODは、プレーに数多の苦行が伴う反面、最終的にはMODを追加していない、いわゆるバニラ状態の『Eternal Galaxy』に比べて、エンドコンテンツの宇宙船や、宇宙ステーションの生産設備が、大幅に強化されていた。
20年もプレーし続けた俺は、当然そんなエンドコンテンツの数々を手に入れるまで、やり込んだ。
手に入れた後も、プレーし続けている。
ただし、なぜか性能が格段に向上した20年後のPCでプレーしても、『Eternal Galaxy』の処理落ちの魔の手から逃れることはできなかったが。
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