『読み得』〜程よく狂った主人公が紡ぐ爽快且つ斬新な新時代の転生物〜
- ★★★ Excellent!!!
今や夜空に浮かぶ星の数ほど存在する異世界小説だが、魅力的なキャラクター達が織りなす単純でいて細部までしっかり作り込まれた物語である本作はその中でも一番星のように光り輝いていることは疑う余地も無いと言えるだろう。
異世界転生物の主人公といえば、ある日特定の異世界人の人格を塗りつぶすように我々現代人の価値観を持った人格が目覚め、神に授かったスキルや元の世界の知識で無双...(何ならそのまま書き飽きた作者は話の途中で似たような設定の新作に着手...)のような作品が跋扈する中、本作主人公は「前世の記憶はあるが本質は異世界人そのもの」であり、それに伴った異世界人の価値観基準の描写は読んでいていて常に新鮮さが感じられた。
また、恋愛や学園といった異世界物の定番要素を限りなく薄くし、そのぶん一人一人の心情や思惑を矛盾なく誠実に描くスタイルは、登場人物一人一人に対する想い、そしてテンプレ要素に頼らずともここまでの面白さを演出する作者の心意気を感じた。
久方ぶりの良作につい筆が乗り長々と書いてしまったが、最後にこのような素晴らしい作品を生み出してくださった作者様に心からの感謝を。そしてこんなレビューを最後まで読んでくださった物好きの皆様にはとっとと本作を読み始める・読み直すことをお勧めしておく。