警察のお世話になりました(後編)

うちのマンションに来た警官は、

防犯カメラに貼り付いています。


「盗まれた可能性のある23日は、

祝日で金曜日でしたが

9時半頃にここを出発したんですね。

じゃあ、その辺の時間帯を

カメラの録画で見てみましょう」


早送りで確認しました。

人通りが結構あり、

わたしソックリな女性が

自分の自転車を動かす、ということもあって

なかなか、動画が進みません。


管理人さんは、別の仕事を抱えていましたので

「まだ見つかりませんか」

とイライラしている様子。

9時40分頃、出発するわたしの姿が

確認されました。


しかし、帰ってくる時間になっても

自転車が、戻ってきません……

「そろそろ12時だから、

帰ってもいい頃なんですけど」


わたしが言うと、警官は眉を寄せて、

「このまま確認できなかったら、

1日の録画を全部見ることになります」


「全部?! どのくらい時間がかかります?」

「8時間程度かな」

「ひえー」


12時。ついにしびれを切らした警官は、

「あなたは、帰宅したらエレベーターを使いますか?」

問いかけてきました。

「はい、必ず使います」

 そう言えば、このエレベーター、24時間監視してるって

 どっかに書いてあった。


「じゃあ、エレベーターの録画を見ましょう」

11時45分、わたしが乗り込んでくる。

「あれっ。わたし徒歩で帰ってる?」

わたしが言うと、録画の場面を変える警官。

玄関の方に画面がうつります。

玄関から、わたしが帰っている。


「ああっ! 玄関から500メートル向こうの

ディスカウトストアから帰っているんだ!

ちょうど、祝日かつ金曜日で、美味しいお寿司を買うことにしてたの。

いつもは歩きで行ってるから、自転車を置きっぱにしたんだ!!!!!」


管理人さんは、大笑いです。

「自転車の置き忘れなんて、犯罪じゃないんですけどね」

警官の言葉に身を縮めるわたし。


かくして、無事、自転車は戻ってきました。

7000歩近く歩いて疲れ果てました。


ご迷惑をおかけして、申しわけありませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る