使用済みマスクの芸術的末路

通院していると、みょうな話を耳にすることが

しばしばあるものです。


ミツバチが、軒下に巣を作ったので

ハチミツが獲れるとよろこんでいたら

いつの間にか、蜂がぜんぶ引っ越したとか

ヒトラーみたいなプーチンが嫌いとか

いろいろ話題はあります。


今回おはなししますのは、

ごく最近聞いた、ヘンタイ話です。

川端康成は、「富美子の足」で

色っぽい富美子に踏みつけにされて

喜んでいるアヤシイ男ふたりの話を

紹介していますが、


今回のヘンタイ話は、それとちょっと似ています。

その人自身も、そうとう面白い人で

文芸作品に登場してもおかしくないと

思うのです。


話し手は老女で、着ている服はカジュアルな

茶色っぽいワンピースでした。

もちろんマスクもしています。

ふつうそうに見えるその人の趣味は

テレビ鑑賞。


今日も、ヒマにあかせてテレビを見ていました。

すると、ニュースバラエティ番組がはじまりました。

ダラダラ眺めていると、インタビューがはじまります。


「コロナ禍ですが、使用済みマスクをどうされてますか」

マイクを向けられた老若男女は、

それぞれ、思い思いに答えます。

「毎日あたらしいマスクをつけてます」

 当たり前そうに、若者がこたえます。

「これと同じマスクをつけているので、

洗って使ってますね。

せっけんで押し洗いするのがコツなんです。

やり方がネットに載ってます」

 白いレース付マスクをつけた、

 スタイリッシュな女性が答えます。


 そのうち、ひとりの女性が進み出ました。

「わたしは、メルカリに売るんです」

 インタビューアーはびっくり仰天。

「え、メルカリ? 使用済みをですか?!」

「高く売れるんですよ。300円ぐらい。

口紅がついてるのがいいんですって」

「あ……いや、コロナってこと、わかってます?」

「わたしには実害はありませんが?」


ひとしきり、その話をした老女は、

憤然として結びました。

「買う人も売る人も、ぜったい、ヘンタイ!」

ヘンタイも、きわめれば芸術作品になる。

やってみる人、いませんかね。

わたしにはそのセンスは有りませんのでご勘弁を!

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