義母に言わないこと

いつだったか忘れましたが、

最初に日本へウクライナから難民が来たとき、

義母がTVを見ながらふしぎそうに、

「ウクライナの宗教ってなにかしら?」


わたしは、「あ、キリスト教だよ。代表的なのは

ウクライナ正教会のキエフ総主教庁、

モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会、

ウクライナ独立正教会の三つの正教会と

東方典礼教会があるそうです」

義母はキョトンとしていたが、


「宗教が違うからって、なんで殺すわけ?」


まあ、そうだろうね一般的な日本人としては。

お義母さんも真言宗を信じてるけど、

そんなに熱狂的ってほどでもないようだ。


「宗教は、考え方のひとつだからね。

考え方が違うと、腹が立つこともあるんだよ。

宗派が違うだけで皆殺しにされたキリスト教徒も

いるしねえ」


滅ぼされたカタリ派がそれですな。


「宗教が考え方の一つ???」

 義母は、理解不能という顔つきになりました。わたしは肩をすくめます。

「もちろん、そういうスタンスが一般的とは言わないよ。

 それはわたしの個人的な考え方。

 人には人の考え方があるんだから、

 いちいちメクジラ立てないってのが

 わたしのスタンス」


「へー」

 義母は、目を丸くしていました。


「わたしは、お義母さんについて、いろいろ思うこともあるけど、

言わないことにしてるの。

だって、いがみ合うことになるもん」


 わたしが言うと、義母は笑いました。

「じゃあ、あんたは心の中で、わたしといがみ合ってるわけ?」


うーん。そうなるのかなあ。

「いや、人には人の考え方がある。それだけのことと思ってるだけ」

義母は、ちょっとやけっぱちになったようでした。

「宗教なんて、カラスの勝手よ!」


わたしは、妄信的に自分の信念を押しつけてくる

エホバの証人みたいな人は

大嫌いなので、そういうマネをしないだけ。


「もしかしてにゃんちゃんは、にゃんにゃか教の教祖さま?」

義母が言う。

傷つくなあ。

わたしのキリスト道は、義母には理解されないことだけはわかったけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る