義母よ、なぜ笑う

台所に立っていると欲しくなりませんか? ティッシュペーパー。

特に朝。暖かいお湯で皿を洗ったあと

洗い桶に入れていると、

鼻からたれるひとしずくの洟水……。


そこでわたしは、大声で叫びます。

「洟紙くださいっ!」

義母、大笑い。

「ティッシュペーパーのことを洟紙なんて」

「なんでー? 洟水が垂れてきたら、拭かなきゃ……!」

「でも洟水に使う以外にも、使うでしょ? 口を拭くときはどう言うの?」


「ふつーにティッシュって言うけど……」

「そらみなさい」

 笑い転げている義母であった。

 なにがそんなに可笑しいの?

 わたしにはサッパリわけわからん。


 今日も台所に立って、またしても洟汁が出てきたので、

 洗い物を中断して洟をかんでいると、

「あんたは、決まって洗い物のときには

 洟が出るのね」

 義母が、うれしそうに話しかけてきました。

 ほっとけ。


 べつに、皿洗いがイヤだというわけじゃない。

 もちろん、つらいことはたしかだが

 サボる口実ってわけでもない。

 たぶん、アレルギーがあるから、

 鼻が湯気に反応しているだけ。


 わたしは、朝食のコーヒーカップを手に取って、

 ゴシゴシこすります。

 湯気がもわっとたちのぼる。


 コーヒーカップのほかにも、

 ヨーグルトかきまぜボウルも洗うし

 白いパン皿も洗うし

 コーヒーメーカー瓶も洗うし

 グラノーラ用のボウル皿も洗う。


 手早く洗えばすぐ済むけれど

 毎回のように洟が出るのは困りもの。

 義母は大笑いしているけど、

 内心ではイラついているかもしれないね。


 洟水と同時に、どうしようもなく出てくるのが

 尿意とか便意です。

 皿を洗っていると、決まってこの二つが出てきます。


「おトイレ行きますっ」

 と言い置いて、

 台所をすっ飛んでいくのが可笑しいと、

 義母はまたもや、大笑い。


 生理現象に対して

 イライラガミガミ言われるより

 笑われた方がまだましです。

 義母がネアカでよかったよ。

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