会話のパワー

どれだけフレンドリーなのか、

自分ではわからないので、

夫が入院している間に

いろんな人に話しかけてみました。


まずは、看護師さん。

珍しい名前をしていたので由来を聞いてみると、

将軍の身の回りをしていた人だとこたえてくれました。

家紋にも、将軍と関係のあるデザインがされているそうです。


「わたしの祖父が、九州の出身だったんです。

この名字、そこではふつーにあるみたいですよ。

祖父の先祖が武士だったので、

わたしも時代劇がだいすき。

とくに最近の大河ドラマは、源頼朝が面白くて」


なのでわたしは、

「いまの大河ドラマの脚本をやってるの、

三谷幸喜だから面白いんですよ」


看護師「三谷……?」


わたし「映画 『記憶にございません!』 の脚本を書いた人」


看護師「ああ、なるほどー」


そんな会話をしているうちに、夫の手術が終わる時間になりました。

なごやかーに会話は終わりましたが、

手術という緊迫した状況は、忘却のかなた……


その日の昼食は、中区のショッピングビルで食べることになりまして、

義母といっしょに、そのビルに入り、エレベーターで地下の

食堂街へと急ぎます。


すると、ひとりのポニーテール女子が、オフホワイト地に小さな黒いドット柄の

可愛いブラウスを着ていたので、

「それいいね! 春の装いだね」

って声をかけたら、女子は喜んで、

「あ、これ、GUで買ったんですよ!」

「うんうん、似合ってる。とくにその、胸のあたりのプリーツが可愛い」

「有り難うございます!」


そんな会話をしているうちに、地下街へエレベーターがつきます。

女子とわかれてから、義母に言いました。

「わたしって、すぐ人に話しかけるって思ってるでしょう!」

義母は、ちょっと呆れたように言いました。


「思うわよー! よくあれだけのことが、スッと出てくるわね。

わたしはとても、出てこない」

「そうかなあ。ふつうだと思うんだけど……」


会話力がカネになるなら、言うことないのになあ。

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