マスクとは絆を生む趣味

冬真っ盛り。

駐車場の車から冬の影が落ちています。

街には花ひとつなく、空はどんよりとして気分もゆううつ。

毎日同じ事の繰り返し、メディアはいつもコロナ、コロナ。

若者に10万円あげるという政府の報道がありました。

あげてもいいけど、そのまえに職をなんとかしてやってほしいです。

リモートで首キリする企業もあるらしい。ひどい。


それはそれとして、ある人から、

「あんたよくこのご時世で、ゲームできるねえ」

と妬ましい目で見られてしまいました。

その人は、毎日が変わらないことに飽き飽きしているのですが、

ゲームをするほどのいわゆる「技術力(スキル)」がなく、

かといって、とくに趣味もないので、暇で仕方ないのです。


わたしは、気の毒になりました。

たまたまわたしは、夫からゲームのことを教えてもらったから

毎日のようにそれで楽しめてますが、

独り身だったらきっと、その人とおなじように、

暇を持て余すだろう。


外に出るのも、コロナでおっくうになってしまった。

どこもかしこも、閉鎖・閉店・ライブも中止。

カラオケだったら

ひとりで歌うのはさびしすぎる。


わたしがもし、その人になったらと思うと、

いてもたってもいられない気持ちになりました。

情けは人のためならずって言うでしょう。


「じゃあ、たとえば、マスクをして近所を歩くのは?」

わたしが言うと、その人はジロリとわたしをにらみます。

「外でなにをしろっていうのよ。毎日、同じ道を歩くのは

つまんないわよ」

「あら、そんなことないよ。注意して見れば」

わたしは反論します。

「たとえば、どんな色のマスクを、どんな人がしているとか見てると、

暇がつぶれることもある。人によってマスクへのこだわりが見えてきて、

面白いよ」

 ボーッと生きてるわけにはいかない。人生はたのしまなくちゃね。

 その人は、それ以来、マスクの話でわたしと盛り上がるようになりました。

 マスク観察は、人とのつながりができた趣味ってところです。

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