第2話 目から何か温かいものが
ほうきを降下させ、地面に降り立つ僕。目の前にいる少女は、以前会った時よりも少しだけ背が伸びているように感じました。
「最近はこの辺りで魔法の特訓してるの?」
「はい。ついこの前まではいつも通りの所でやってたんですけどね。気分を変えて特訓するのもいいかもと思いまして」
「なるほど」
将来は魔法を使った職に就くことを夢見ている少女。いまだに特訓は続いているようです。何と素晴らしい向上心。どこかの誰かさんにも見習ってほしいものですね。
「でも、今はちょっと煮詰まってるんですよ」
「煮詰まってる?」
「はい。実は、今特訓中の魔法が思ったように出せなくて。いろいろ努力はしてるつもりなんですけど」
悩ましげに腕組みをする少女。手に握られている杖は、色がかなりあせていました。
きっと少女は、魔力の量をあれこれ調整したり、魔導書とにらめっこをしたりしているんでしょうね。どうしてそう思うかですって? そりゃ、僕も毎日のように似たようなことをしていますから。師匠に釣り合う魔法使いになるために。
……おっと。目から何か温かいものが。
「で、弟子さん!? なんで急に泣いてるんですか!?」
「いや、ごめん。ちょっといろいろ重なるものがあってね。こう……感極まっちゃったというか」
「は、はあ……あ、そうだ!」
突然、少女の口から明るい声が飛び出しました。思わず首をかしげる僕。
「どうしたの?」
「あのですね。一つ、弟子さんにお願いしたいことがあるんです」
グイッと一歩、僕に歩み寄る少女。僕を見つめる瞳の奥。そこにあるのは赤い炎。
「お願いって?」
「弟子さん。私に魔法を教えてください」
…………え?
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