第162話 もし、僕の大好きな人が
「僕……ですか?」
「うん」
大人で子供。そんな私のことを、果たして弟子君はどう思うのだろうか。心から受け入れてくれるのだろうか。
面倒、バカらしい、気持ち悪い。弟子君なら、そんなことを言うはずがない。それくらい分かっている。分かっている、はずなのに。
恐怖で震える体。その震えを抑えるように、体にグッと力を入れる。心の中に残った灰色の霧が、モヤモヤとうごめいている。
「僕は……」
「…………」
「……正直、よく分からないです」
弟子君の口から告げられたのは、意外な答え。
「そうなの?」
「はい。僕は聖人じゃないですから。大人で子供な人全員を受け入れられるかと聞かれれば、多分無理です。嫌いになるってことだって、きっとあるでしょうし」
「…………」
弟子君の言葉には、確かな重さがあった。きっとそれは、弟子君がこれまで経験してきた何かと繋がっているのだろう。といっても、私にそれを知ることなんてできないけれど。
「でも……」
「……でも?」
「もし、僕の大好きな人が、大人で子供だったら……」
この日、弟子君が言ってくれたこと。弟子君の優しい笑み。きっと私は、それを一生忘れないだろう。
「『しっかりしてください』なんていろいろ言いつつも、結局は甘やかしちゃうんじゃないかなって、そう思います」
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