第148話 大丈夫……?

「まさか、憧れの魔女さんと会えるなんて!」


「は、はあ」


 ぎこちない笑みを作りながら、私は彼と握手をした。


 どうやら、『森の魔女』の名とその噂は、多くの人に広まっているようだ。別に、嫌というわけではない。仕事柄、名が知られるのはとても都合がいい。だが……。


「ありがとうございます!」


「う、うん」


 …………目がキラキラしてる。


 ここまでの反応をされると、さすがに恐縮してしまう。


「それで、えっと……シチュー、でしたよね。あ、もしかして、作る人を集めて何かするんですか? もしかして、魔法の研究を……」


「い、いや。ただ、手作りのシチューが食べたいなと思っただけでね」


「なるほど。じゃあ、ぜひ協力させてください。僕、料理得意なので」


 そう告げながら、ドンッと自分の胸を叩く彼。


「そ、そうなんだ。じゃあ、頼もうかな」


 大丈夫……?







 ほうきに二人で乗り、私の家へと向かう。もちろん、ほうきを扱うのは私。


 聞いた話によると、彼は、町で一人暮らしをしている魔法使いらしい。だが、簡単な魔法しか使うことができず、ほうきで空を飛ぶこともできないんだとか。


「今は、魔法薬を作ってお金を稼いでるんですよ。まあ、収入は全然安定しませんけどね」


「……ご両親は?」


「実は僕、孤児なんです。両親の顔は一回も見たことがなくて」


「……そっか。変なこと聞いちゃったね。ごめん」


「い、いえいえ。魔女さんが気に病むことじゃないですよ」


 私の背後で、彼がブンブンと手を振っている気配を感じる。


 孤児。一人暮らし。安定しない収入。


 彼の姿が、一昔前の自分と重なるように思えた。

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