第147話 も、森の……魔女……さん?
「シチュー作れる?」
魔獣に襲われていた男の子。彼を助け、最初に放った私の一言。今思い出しても、何とバカバカしい質問だろうか。あまりにも突拍子がなさすぎる。
でも、聞かずにはいられなかった。孤児院で出されていたような、手作りのシチューが食べたかったから。
「えっと……シチュー……ですか?」
困惑の表情でそう尋ねる彼。何を言われているのか、全く分かっていないといった様子。まあ、当然といえば当然なのだろうが。
「そう。シチュー。作れない?」
「……作れますけど。って、そ、そうだ! あ、危ないところを助けていただいて、ありがとうございました!」
そう告げながら、彼は、ものすごい勢いで私に向かって頭を下げた。その拍子に、彼の肩にかけられたポシェットから、赤色の薬草がポトリと地面に落ちる。だが、それを拾うそぶりなど一切見せず、彼は、頭を下げ続けていた。
……結構いい子なのかも。
「いやいや。別に、大したことじゃないよ。この『森の魔女』にかかればね」
「……え!?」
驚きの声とともに、彼の頭が上がる。私を捉えるその目は、これ以上ないというほど大きく見開かれていた。
「も、森の……魔女……さん?」
「そうだけど……どうしたの?」
私は何か変なことでも言ってしまったのだろうか。ただ最近慣れてきた新しい魔女名を出しただけなのだが。
「ほ、本物……ですか?」
「もちろん」
私が頷くと同時に、彼の体がブルブルと痙攣し始める。そして、震える手をゆっくりと前に差し出しながらこう言った。
「あ、握手してください!」
…………はい?
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