第144話 まあ、多分……

「じゃあ次の質問っすね。許せないことは?」


「許せないこと……か。友達を傷つけられることかな」


 ボクの答えに、「ほー」と声を漏らす後輩ちゃん。そんなに意外だったのだろうか。


「ちなみに、具体的なエピソードとかあるんすか?」


「……昔、ボクの友達が、嘘の噂を周りに広められたことがあってね。いろいろあって、その子、ボクの前からいなくなっちゃったんだ。あ、もちろん、死に別れとかじゃないからね。でも、あれは許せなかったなあ」


 当時の映像が次々と頭をよぎる。あの後、嘘を広めた張本人たちを探し出して、お父さんの力で軍から追放してもらったっけ。今思えば、あれが本当に正しかったのか分からない。もっと上手くやれていたのかもしれない。ただ一つ、はっきりしていること。それは、ボクが相当に怒っていたということだ。


「そんなことがあったんすね。何だか先輩の新しい一面を知れて嬉しいっす」


 ニコニコと微笑む後輩ちゃん。


 新しい一面……。ふむ。インタビューというのもなかなか面白いかもしれない。今度、弟子ちゃんに……。


「先輩。その友達って、今は……」


「そうだねー。あんまり言うと特定されちゃうから……。まあ、多分……」


 ボクは、ちらりと時計を見る。時計の針は、十時半を指し示していた。朝というには遅く、昼というには早い。そんな時間。


「まだ寝てるんじゃないかな」


 何となく、そんな気がする。







「師匠、起きてください! 今日は仕事に行きますよ!」


「うーん。あと五時間……zzz」

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