第143話 何聞いてるの!?

「き、気を取り直して、始めるっす!」


「はあ……ちなみに、どんなこと聞かれるの?」


「別に、難しいことじゃないっすよ。『会社エースの素顔に迫る!』っていう記事っすから。先輩の本性をさらけ出すための質問だけっす」


「ちょ、ちょっと待って。何それ? 不安しか感じないんだけど」


 モヤモヤとした思いを抱えたまま、ボクは、後輩ちゃんからのインタビューを受けることになった。


「じゃあ、まず、好きな色は?」


「青かな」


「好きな食べ物は?」


「ケーキだね」


 ……あれ? 意外と普通。


 インタビューが始まる前は、かなり警戒していたボク。だが、繰り返されるのは軽い質問の数々。これならなんとかこなせそうだ。


「休みにやってみたいことは?」


「ショッピングとかやりたいね」


「今、恋してる人は?」


「そりゃ、弟子ちゃ……って、何聞いてるの!?」


 油断大敵とはこのことか。思わず声が大きくなる。それと同時に、自分の顔の温度がグングンと上昇していくのが分かった。


 後輩ちゃんを見ると、その顔には、ニヤニヤとした笑みが浮かんでいる。完全に面白がっているのだ。


「んー? 私はただ、メモに書かれてたことを聞いただけっすよ。そんなことより、先輩の答え、よく聞こえなかったすねー。もう一回、言ってほしいっす」


「そ、その質問にはノーコメントで!」


 そう告げるボクの心臓は、先ほどよりも早い鼓動を刻んでいた。

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