第115話 き、気まずい……
「なるほどねー。それなら、ボクが手伝ってあげようか?」
「いいんですか!? 今、お仕事中なんじゃ……」
「いや。ちょうど朝の分は終わったところだよ。次の配達まではまだ時間があるし」
「そ、それなら、ぜひお願いしたいです」
「オッケー!」
そんなこんなで、郵便屋さんが僕の特訓に付き合ってくれることとなりました。ありがたや。ありがたや。
「いきますよ」
そう告げて、僕は、先ほどと同じ方法で壁を作り出します。壁が消えないよう杖に魔力を込め続けながら、急いで壁から離れた所にいる郵便屋さんのもとへ。
「私も準備するね」
郵便屋さんは、持っていた杖を構えて小さく一振り。次の瞬間、杖の先が紫色に光り、僕たちの背後に氷のつららがいくつも現れました。
「じゃあ、最初は、一本だけぶつけてみるよ。だんだんぶつける数を増やしていって、壁の強度を調べていこっか」
「はい。よろしくお願いします」
郵便屋さんの攻撃がどれほどの威力を持っているかは分かりません。ですが、さすがに、つららの一本くらいなら耐えることができるでしょう。願わくば、五本くらいまで……。
「せい!」
郵便屋さんは、再度、杖を振るいます。すると、背後にある一本のつららがものすごい勢いで壁に向かって飛んでいきました。それは、鋭いやりのように壁にぶつかり、そして……。
バリン!
壁を粉々に砕いてしまいました。
「…………」
「…………」
「……壊れちゃったね」
「……そ、そうですね」
「…………」
「…………」
口をパクパクさせる郵便屋さん。きっと、僕にどんな言葉をかけようか迷っているのでしょう。その目は、上下左右、いろいろな所に向けられています。
「…………」
「…………」
き、気まずい……。
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