間章 秘密の特訓

第114話 何してるの?

 朝八時。家の外。


 僕は、杖に魔力を込めながら、空中で四角を描くように動かします。すると、僕のすぐ目の前に、透明な壁が現れました。


 これは、大きな衝撃や熱などを遮断してくれる壁。多くの魔法使いが、自分を守る盾として使用しているものです。もちろん、僕も例外ではありません。ですが、魔法使いの技量によって、その強度は大きく異なります。


「うーん。これ、前より強度上がってるのかな? 分かんないや」


 試しにノックの要領で壁を叩いてみますが、コンコンと軽い音がするばかり。強度なんて分かりません。


 一旦、杖に込めた魔力を解いて壁を消し、ローブの内ポケットに入れておいた小さな魔導書を取り出します。印を付けておいたページを開き、一読。


「これでいいんだよね。でも、確かめる方法がないとなあ。師匠に頼るのは……ちょっと……」


 師匠は、魔法の天才です。ですが、魔法を教えることに関しては別なのです。「グワー」、「フニャー」、「ビューン」。そんな、よく分からない表現ばかりが飛び出します。さすがに、僕の理解力では追いつくことができません。


 ……まあ、そもそも、僕がこんなことをしている理由を師匠に知られるのが恥ずかしいというのも、師匠に頼りたくないという理由の一つなんですけど。


「壁を出したまま別の魔法が打てたらいいんだけど、さすがにそこまではできないから……」


「弟子ちゃん。何してるの?」


 突然、上空から聞こえた声。思わず顔を上げると、そこにはほうきに乗った一人の女性。青色の三角帽子。軍隊のような制服。整えられた綺麗な短い黒髪。


「あ。おはようございます。郵便屋さん」


「おはよう。弟子ちゃん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る