第101話 ……お腹すいた

 名も知らないどこかの国。どこかの町。


「ううん」


 ゆっくりとベッドから体を起こす。安宿にあるボロボロのベッド。硬くて妙なにおいもする。でも、贅沢なんて言ってられない。国外追放から一か月。財布の中にあるのは、数枚の貨幣のみ。


 お金を稼ぐのには毎回苦労する。最初は、どこかで雇ってもらってとも考えたが、私の年齢は十四歳。子供を雇ってくれるところなんてそうそうない。そもそも、仮に雇われたとして、上手くそこに馴染める自信は全くない。軍にいた時のように、周りから冷たい視線を向けられたら。そう考えるだけで、震えが止まらなくなる。


 だから、私は、大通りで占い師のまねごとをしてみたり、魔法関係の物品修理をやってみたり、思いつく限りのことでお金を稼いでいた。


「……お腹すいた」


 私は、鞄から昨日買ったパンを取り出す。柔らかさの欠片もないそれを口に運び、咀嚼する。味はほとんどしない。


 パンを食べ終え、私は立ち上がった。部屋から出て、鍵を閉める。鍵を宿屋のカウンターに置き、外へ。早朝の爽やかな空気が私の肺に流れ込む。目の前にある通りに、全く人は通っていない。通りに立ち並ぶ家や店。そこからも、人の気配は全く感じられない。早朝だからだろうか。それとも、この通りを、人々が忘れてしまったからだろうか。


 さて、今日は別の国に行くとしよう。昨日、警察から、子供が一人で商売をやってはいけないと警告されてしまった。次、同じようなことをしているのがばれたら、施設送りになるらしい。それだけはごめんだ。


 私は、ほうきにまたがり、上空へ。だんだんとスピードを上げながら飛んでいく。いくつもの町を通り過ぎ、見えてきたのは、巨大な門。門を通過すると、そこはもう国の外。広がるのは、短い草が無数に生えるただの平原。


 私は、ただただ無表情のまま、平原の上を進むのだった。

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