第74話 バリン!

 次の瞬間、師匠の杖の先が青白く光り、魔力の塊が現れました。その大きさは、旅人さんが放っていたものの二倍はあるように思えます。


 それを見た旅人さんは、素早く杖を振るいました。すると、旅人さんの目の前に、透き通った薄緑色の壁が現れました。おそらく、師匠の攻撃に備えたのでしょう。


「…………」


 無言のまま、師匠は、魔力の塊を旅人さんに向けて放ちました。ものすごいスピードで飛んでいく魔力の塊。それは、あっという間に旅人さんが作った壁まで到達し……。


 バリン!


「……え!」


 壁を貫通した魔力の塊。それは、勢いそのままに、旅人さんにぶつかりました。


「きゃあああああ!」


 吹き飛ばされる旅人さん。その悲鳴が、辺り一面に響き渡ります。


「旅人さん! 大丈夫ですか!?」


「うう……」


 地面に横たわる旅人さん。僕の言葉に、うめき声だけが返ってきます。大丈夫でないことは明白でした。


「……弟子君、とりあえず、家に運んで治療しようか」


「りょ、了解です!」


 こうして、師匠と旅人さんとの勝負は決着を迎えました。結果は、師匠の勝利。いや、圧勝と言ってもいいでしょう。


 この日、僕は、はっきりと理解しました。師匠が、想像以上にとんでもない力を持っている魔女であることを。そして、僕が、師匠と対等の存在になるなんて、夢のまた夢であることを。

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