第30話 ……せいや!

「お、このコーヒーおいしいね。ボク、結構好きかも」


「それはよかったです」


 僕の出したコーヒーを飲んで、ニコッと微笑む郵便屋さん。それにしても、自分で選んで買ったコーヒーを褒めてもらえるって結構嬉しいですね。……フフフ。


「ところで郵便屋さん。今日はどんな御用ですか?」


 郵便屋さんは、いつも僕たちの所に仕事のお手紙を持ってきてくれます。ですが、ほとんどの場合、玄関でお手紙を渡して、そのまま帰ってしまうのです。郵便屋さん自身、仕事で忙しい身ですからね。それなのに、今日は、家の中に入ってのんびりしています。きっと、何か特別な事情があるのでしょう。


「あー。……その前に、魔女ちゃんを起こしてきて。どうせまだ寝てるんでしょ」


 少しだけ迷った様子でそう告げる郵便屋さん。師匠に依頼があるということでしょうか。


「分かりました。ちょっと待っててくださいね」


 僕は、そう言って師匠の部屋へ。


 カーテンの閉められた部屋。薄暗い室内。その床には、足の踏み場もないほど散らばった大量の本。部屋の奥に、師匠の眠る大きなベッド。


「また散らかして……」


 僕は、はあと溜息をつきながら、本を踏まないようにベッドへ。


「師匠、起きてください」


「……うーん。むにゃむにゃ」


「……せいや!」


 僕は、掛け布団を勢いよくはがしました。普段は、こんな乱暴な起こし方はしませんが、お客さんもいることですし、不可抗力ですよね。え? 前に乱暴な起こし方をしてたじゃないかって? ハハハ。まさか、まさか。


「ふにゃ!?」


「おはようございます。師匠」


「……おはよう。弟子君」


 僕にジト目を向ける師匠がそこにいました。

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