第21話 うわーーーん!

「でも、この子が湖の水質をおかしくしちゃったのは事実だし……どうすればいいかな。黙っておくのは簡単だけど……」


 少女を見つめながら悩ましげに呟く師匠。


「わ、私、どうなっちゃうの……?」


 ブルブルと肩を震わせる少女。その顔には、明らかな怯えの表情が浮かんでいます。少女にとっては、ただ魔法の修行をしていただけ。しかし、いつの間にか悪者になっており、捕らえられてしまった。恐怖を感じたとしても何らおかしくはありません。


「師匠……えっと……」


 さすがに少女がかわいそうです。そう思い、僕が師匠に声をかけようとした時でした。


「……う……うわーーーん!」


 突然、少女が大声で泣き始めたのです。


「ちょ! 急に泣かないで!」


 そう言いながら少女に近づく僕。そんな僕を見て、少女の鳴き声はさらに大きくなります。


「わ、私、これから襲われるんだーーー!」


 ん?


「ばらされたくなかったら体で払えって言われて!」


 んん?


「心が壊れるまで体をぐちゃぐちゃに弄ばれて!」


 んんん?


「最後には、どこかに奴隷に出されて!」


 んんんん?


「奴隷先でもいろいろ……うわーーーん! おかあさーーーん!」


 んんんんん?


 どうやら、少女の妄想力は限界突破しているようです。


「い、いやいやいや。さすがにそんなことしないから!」


 僕は、少女の前でブンブンと首を振ります。どうにか泣き止んでもらわなくては、収拾がつきそうにありません。あ、そもそも、少女を縄で捕らえた僕が話しかけるより、師匠の方がいいかもしれませんね。


「師匠、何とかしてください!」


「弟子君……いたいけな女の子になんてことをしようとしてるの……」


「師匠まで何言ってるんですか!?」


 結局、辺りが暗くなる頃まで、少女は泣き止んでくれませんでした。

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