第20話 まあ、何となくは分かってたけどね

「しゅ、修行?」


「はい。まあ、そんなところです」


 僕と師匠の前。縄でぐるぐる巻きにされた少女は、ゆっくりと頷きました。


「まあ、何となくは分かってたけどね」


「え!? 師匠、分かってたんですか!?」


「もちろん。でも、あくまで、可能性が高いってだけだったから、君には言わなかったんだけど」


 師匠と少女の話を合わせ、ようやく真相が見えてきました。


 最近、町に引っ越してきた少女。彼女は魔法を使うことはできましたが、得意というほどではありませんでした。将来、魔法を使った職に就くことが夢だった彼女は、魔法の特訓をしようと思い立ったそうです。その場所として選んだのがこの湖。ここならだれの迷惑にもならないだろうと考えた彼女は、湖の周辺でひたすらに魔法を使用したようです。


 ですが、そこに一つの誤算がありました。湖には、周囲の木から出る魔力を触媒にして、水を浄化するように魔法がかけられていたのです。その魔法は、湖の傍で彼女が放ち続けた魔法の魔力すらも触媒にしていきました。結果、過剰な魔力供給により、湖の水質はおかしくなってしまったということです。


「湖の周りで少しくらい魔法を使っても、その水には何の影響もないと思う。でも、今回は数が数だったんだろうね」


 確信めいた表情でそう告げる師匠。そういえば、師匠は、湖にかけられている魔法の構造を見た時、「……やっぱりね」と呟いていました。もしかしたら、その時すでに、師匠にはある程度の予想がついていたのかもしれませんね。

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