第19話 なんで死ぬ前提なんですか!?

「じゃあ、師匠、行ってきます」


「うん。頑張って。骨は拾ってあげるよ」


「なんで死ぬ前提なんですか!?」


 ここで死ぬなんて、まっぴらごめんです。僕にはまだやり残したことがたくさんあるのですから。例えば、師匠に僕の気持ちを……。


「大丈夫。何とかなるよ」


 ニコリと笑いながらそう告げる師匠。一体どこからその自信が来るのでしょうか。


「…………よし」


 覚悟を決め、僕は、あらかじめ傍に置いていたほうきにまたがりました。杖を手に持ち、ほうきを浮上させます。ここからはスピード勝負です。躊躇していてはやられてしまうでしょう。


 ほうきを湖の方へ走らせます。どうやら、少女も僕の存在に気が付いたようです。何事かと、顔をこちらに向けていました。まだあどけなさが残る顔に、僕の力が一瞬抜けます。ですが、すぐに力を入れ直し、杖を少女に向けました。


「えい!」


 僕がそう叫ぶと同時に、どこからともなく縄が現れ、少女の周りを取り囲みました。縄は、そのまま少女を締め上げていきます。


 どうやら、奇襲は成功したようです。ですが、忘れてはなりません。相手は、魔法に長けている可能性が高いということを。きっと、僕が出した縄もすぐに魔法でほどかれて……。


「ふええええ!?」


 その時、とてつもなく大きな叫び声。その声の主は、縄でぐるぐる巻きになり地面に倒れた少女。彼女は、縄をほどこうともせず、涙目で僕のことを見上げています。


「な、何ですか!? 何なんですか!? 私、何も悪いことしてません!? は! ま、まさか、あなた、私を捕らえてあんなことやこんなことを……」


 なんか、ものすごい勘違いしてる!

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