第8話 ……これからもっと厳しくしましょうかね

 郵便屋さんと別れ、僕と師匠は役所へ。役所の上空まで来ると、僕はゆっくりとほうきを地上へと降下させ、地面に降り立ちました。


「師匠、着きましたよ。起きてください」


「うーん……あと五時間」


「あと五分みたいなノリで言わないでください」


「じゃあ、あと五年」


「なんで増えてるんですか。もう」


 僕は、頭の上の三角帽子を手に取り、つばの部分をグイグイと引っ張りました。


「い、痛い痛い。ご、ごめん。起きる、起きるから」


 師匠がそう叫んだかと思うと、次の瞬間、僕の手から三角帽子が消えてしまいました。目の前に現れたのは、両頬をさすっている涙目の師匠。


「うー。乙女の頬を引っ張るなんて」


「つばの部分って、頬だったんですね」


 驚きの事実が発覚してしまいました。となると、他の部分は……。


「もう。弟子君、最近私に厳しすぎるよ」


「そうですか?」


「そうだよ。出会った頃は、もっと子供っぽい可愛さみたいなのがあったのに……」


 師匠は、頬を膨らませながらそんなことを口にしました。


 子供っぽい可愛さ……ですか……。


「……これからもっと厳しくしましょうかね」


「なんで!?」


「そりゃ…………。さ、そろそろ時間ですし、行きますよ」


 僕は、役所の扉に向かって歩き始めました。そんな僕の後ろを、「むう……」と不満げな声を漏らしながら師匠がついてきます。


 さて、今回の仕事も頑張りましょう。どこかの誰かさんと対等の存在になるために。

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