第7話 琥珀に閉じ込められた月




その瞳、琥珀色の瞳を

見つめていると僕は

まるでその中に閉じ込められた

虫のように君の瞳に映る


そして僕は目を閉じる


君の瞳に閉じ込められた

僕は君のもの



夏にキャンプをして

ふたり並んで夜空を眺める

山の上

星空の下

流れ星がはし

君の瞳に幾つもの星が

閉じ込められた


そして君が目を閉じる



夕方、日が暮れてもまだ暑さが残る日

ふたりで花火大会に出かけた

ゆっくり暗くなっていく

白地に青い朝顔の柄の浴衣を着た君と

川の土手を手をつないで歩きながら

花火大会が始まるのを待った

花火が上がる音を聞いて

その場所で立ち止まる

夜空に咲く幾つもの花火

それを見上げる君

暗闇に立ち止まる君の横顔

花火の色が代るがわる

君の色を変えていく

その瞳にはその花火が

閉じ込められたのだろうか

その時は確かめられなかった


花火大会も終わり

家路へと帰るその道の遥か上の空

円に満たない月が昇っていた

黄色く光る月を見あげる君の

その琥珀色の瞳に

今夜の月が閉じ込められた



そしてふたりは目を閉じる





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月と僕と君と @sansui092

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