第23話 匂い
「三人してここで何やってるんだ!!!!!!!コラ!!!!!!」
「すみません!!!」
「すみません!!!」
「すみません!!!」
X X X
俺たちは体育倉庫で正座したまま、頭を下げている。それもそのはず。この高校に勤める先生の中で一番強キャラと言われる、内藤先生にバレたわけだから……。
「真礼と有紗はうちの学校を代表する優秀な生徒……なのに……」
「すみません……」
「申し訳ございません……」
「い、いや……この二人は悪くありません……全部俺のせいです……」
「謝ったらなんでも許されると思ってんのか?」
だが、俺たちがいくら謝罪しても、内藤先生は微動だにしない。有紗と真礼は、今にも泣きそうな表情を浮かべていた。
「真礼、私は、いつも京子さんから君の男女関係について情報を収集するように言われているの。だから、学校終わったら、今日あったこと全部、報告するからね。真礼は理事長の一人娘なのに、こんないかがわしいことをしたなんて……がっかりだね」
「え?」
「なんだ?古澤?文句でもあるのか?」
「い、いいえ」
京子さんは真礼が俺の匂いを嗅ぐということをとっくに把握しているはず。確かに、体育倉庫でやったことはよくないが、かといって、罵られるほどのことはしていない。
要するに、内藤先生は、俺たち三人の関係を京子さんが知っているという事実を全く知らない。
「やっぱり、どいつもこいつも、破廉恥なんだから!!」
正直、内藤先生の態度は身に余るものがある。不良っぽいヤンキやギャルを取り締まることにおいては、全然問題ないのだが、
有紗と真礼にあんな強圧的な態度を取るなんて……
ちょっと、お灸を据えてやろう
そう判断した俺はすっと立ち上がる。
「あん?古澤、今説教中なのに何勝手に立つの?もしかして、先生舐めてんのか?」
「別に舐めてませんよ。けれど、これはいくらなんでも言い過ぎでしょ?」
「は?」
「俺を罵るのは別に構いませんが、有紗と真礼のことを全くわからないくせに、なに偉そうにもの言ってるんですか?」
「ん!(ドキッ)(有紗)」
「ん!(ドキッ)(真礼)」
「ほお……古澤、中々いい度胸してんな。まさか、私に向かって説教じみたことを言うなんて……校内の風紀を破った上に、先生にも歯向かう……」
「……」
「悪い子はどうなるのか、思い知らせてやる!!」
と、内藤先生は、俺を胸ぐらを掴もうとする。
だが、俺は、それを
そして、
内藤先生の頭に腕を回し、そのまま俺の胸のところに持っていった。
「ん!」
そして、
「あらあら……古澤くん、中々やるのね」
「京子さん!?!?!?!?!?!?」
「お母さん!?」
京子さんが、長い金髪を払いながら体育倉庫の中へと入ってくる。今日は珍しく、ジャージ姿だ。
「んぷ……こ、この匂いは……ん……」
突然すぎる京子さんの登場に、俺含む三人は戸惑う。内藤先生は……静かだ。
どうすればいいのかわからず悩んでいる俺たちを他所に、京子さんはいきなり携帯を持ち出して、カメラアプリを立ち上げ、俺と内藤先生へと向ける。
「古澤くん」
「は、はい……」
「内藤にもっと匂いを嗅がせて」
「え?」
「内藤の分厚い仮面、脱がしてみたくない?」
「そ、それは……」
「今、ここで引き下がると、内藤は三人の仲をずっと邪魔するんでしょうね〜」
「ん!それは……」
「いやでしょ?」
「はい!」
「だったら、答えは一つしかないわね〜」
「はい!」
「うふっ」
京子さんは、妖艶な笑顔を俺に向けてくる。
「倫太郎……一体何をするつもりなのかしら……」
「倫太郎くん……」
「二人とも、心配するな。これは、お前たちを守るための行為でもあるから」
そう告げた俺は、内藤先生を引き離した。
「古澤……君……なんて匂いしてんだ……」
「内藤先生、覚悟してくださいね!!」
「え?な、なんでいきなり上着脱ぐの?い、いや!近寄るな!直接嗅ぐと、やばいから!ひゃん!ちょ、ちょっと!あ、ああ!……ん!」
上半身裸の俺は、後ずさる内藤先生の手を引っ張って、顔を俺の胸に押し付けた。
もちろん、この様子を京子さんは撮影中である。
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